夢の近傍
11月
26日
あなたは夢みる
あなたはわたしの夢みる
凪の小舟で荒岩を
くるりめぐる
夢の御覧
キラキラとほほ照る
銀紙
うろこ波
虚空に映えて
その向こうでレンズが調節されて
小舟からみえるあたりだけ
閉じられた密な無音ばかり
わたしの像力は
突如やさしく慎重に
あなたを襲う
あなたが新しい休息の時に至り
わたしの像力が夢みた庭
武蔵野の面影を残す疎林につづく庭のある一間で
何もなく なにもかもないことを笑って
湯を沸かし木碗に注ぎ
盆にのせ
ひなたに置いた
たちのぼり碗の縁で渦巻き水面撫でまた消えのぼる
けしておなじあらわれのない渦の
湯気と影の形式を飽かず眺めた
そのことが
どれほどわたしを惑乱させたか
御覧
水平線に一頭の騎馬兵があらわれ
渦巻く一陣の流体となって
いまあなたを貫通し
逆髪
荒岩を襲い
吸われて消える
すいとひと押し
押され
のんだ息をほっとつげば
頸動脈から音が始まる
気づくとき
あなたは髪のひと振れほど遅れる
瞬間のさきが膨大なつづきだから
その誤差が
わたしの位相
はるかな砂の沈黙の音が耳を埋めてゆく
なつかしく見しらぬ断面に
あなたは開示する
風も帆もなく
鼓動ばかりで