一匹の俺
8月
20日
刺さっている鉄片に触る
サンダーで削れば弧を描く火花
押し付けた力に手が痺れ
缶コーヒーの中身が揺れていた
腰巻を斜めに付け
ハンマー、ペンチ、ドライバー
最初はそれがカッコいいと感じていた
室内での工事
電気屋が座り込み昼メシを食っている
俺はひとりゴンドラの棚を組み立て続けた
おっさんらがこっちを睨んでくる
メシの時間だからホコリたてるなよ
そう言いたいのだろう
俺は十八歳、おっさんには負けねえ
売られた喧嘩は買ってやる
しかし、売られもしない喧嘩
陰険なクソ野郎だ
夜になり電気屋は配線を外し
電気を消して行きやがった
俺は窓からの月あかりに目を擦り
感を働かせてハンマーで叩き
サンダーで鉄柱を切る
クソ野郎が、みんなクソ野郎だ
最後の一本を切り終え
誰かが忘れた缶コーヒーを握った