街の海
10月
6日
猫のハナとユメが黒目を大きくして
手すりに上がり通りを見ている
タイヤの擦る音は
波のように打ち寄せては返す街の海
風は風鈴をやさしく鳴らし
コーヒーの程よい苦味に
いつかのどこかの憧れを夢みている
大波のトラックが過ぎてゆく
小波の乗用車は追いかける
私は揺れない船の上で漕ぐこともなく
周りを動かし繋がってきた時間の不思議に
すこし戸惑いながら残りのコーヒーを口にする
そして枯葉が迷い込んだ床に横になると
説明しようもない涙が流れ出しては
その心地よさに救われていた
ユメとハナはもう部屋へ戻っている
私はもう少し街の海に浮かんでいたい