目に見えない敵とは デジタルの数値で知り距離を置く 福島の被災地を巡る 反り返った防潮堤は何処までも続く 哀しみの経験から設計されただろう形は 涙の曲線で押し返してくれるはず まだ小さい防潮林は何処までも続く 膝くらいまで伸びた松の木は 未来がたくさん詰まっているに違いない 八年目の夏も魚を下ろせない漁港 七キロ先には現発事故の靄がかかっている それでも復興の手は休めずに 重機はガリガリと明日のために唸っている 緑は茂り鳥は飛ぶけれど 流された家に残された下駄箱には まだ靴がひとを待っている 復興は少しづつ進んでいるが だけど帰れぬ帰還困難区域があり せつなく惨さを押し付けてくる 見えない敵をつくり出したのは 人間だという原因が其処にはあった