虹の作業員 4 (全10編)
9月
13日
星が輝きを下界に降らす頃、作業員は雲の上に帰ってきた
記者会見で疲れた作業員だったが、班長に報告するため高台へ向かった
「班長様、どこにいるのですか?」
歩くこともできない班長が、いつもの高台にはいなかった
「班長様! どこに……」
あっち行って、そっち行って、こっち来て
もう足が動かなくなるくらい班長を捜した
そして、作業員は本社の人間の言葉を思い出していた
《あいつは口しか動かない三十年後の君だろ。
もう辞めてもらうことは本社で決まっている!》
《もう、君と会うことはない》
作業員は考えていた……
班長様は本社の人間にどこかへ連れて行かれたんだ
私の三十年後が班長様だなんて、わけのわからないことを言って
本社はもう班長様と私が必要ないんだ
きっとそうなんだ
本社の人間はやはり人間
私は雲の上の作業員
何を信じればいいのか
それにひとりぼっちになってしまった
私はこれからどうすれば……
もう、水蒸気を集める気もしない
班長を見つけることのできなかった作業員は、
疲れた足を引きずり再び高台へ向かった
班長の立っていた高台にのぼり、胸に手をあてた
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
作業員には確かに班長の声が聞こえた
「班長様さま!」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「班長様、私はどうしたらいいのかわかりません。もう虹なんてつくりたくありません」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「班長様は今、どこにいらっしゃるのですか?」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「班長様、どうしたら……」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「…………」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「…………」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」
「はい」
その夜は天の川がキラキラ流れて
作業員はひとつの想像をしていた
あそこには天の川の作業員がいて
一生懸命に星くずを集めていると
天の川を眺めてはひとときの癒し
疲れた心とからだを夜に委ねては
雲の上で大きな寝言は消えてゆく
続く。。。