母のいない実家
5月
4日
こもった空気
引っ越してきた当初の材木の匂いがして
四十年前がすぐそこにある不思議
母は故郷の山形に帰郷
私は頼まれた部屋の換気と庭に水を撒く
すでに庭には水が撒かれているようだ
近所の親切で潤っている花や木
有り難い思いに感謝して
横になると心地よい風が抜けて
近づいては遠ざかる電車の通過する音
身体は床に溶けてしまいそうだ
そろそろ戸締りをして帰ろう
母のいない実家はもの足りない
父の位牌に手を合わせ
また来るよ
そう言って戸締りをしながら
母の書き置きをもう一度読むと
「申し訳ない」と言う言葉が
「申し沢ない」と書かれていて
クスっを実家に置いていった