月 雪ふりぬ絶え間もなく、 雪ふりぬいともわびしら。 夜の「時」はかくて近づき そこはかと木により枝より 悲しげに粉雪に落つる。 凍えたる小鳥の翼を見よ あふぎ見よ、大木の灰色の欺きを。 いつしか淋しげに月に輝やき 地平より色褪めてうかがひのぼる。 ちからなきためいき…… 一物もなき冬の夜に あはれにも、うかがひ寄る月のこころ。 赤とんぼ 夕焼け、小焼の、 赤とんぼ、 負われて見たのは、 いつの日か。 山の畑の、 桑の實を、 小籠に摘んだは、 まぼろしか。 十五で姐やは、 嫁に行き、 お里のたよりも、 絶えはてた。 夕焼け、小焼の、 赤とんぼ、 とまっているよ、 竿の先。 ✳︎實(実・み)