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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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遠隔家族の幸せ

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窓の向こうは真っ暗
遠くに幾つかの星が輝いて

僕はカプセル型をした飛行船の中にいる
ベルトでカラダを固定し
両手にはパソコンのマウスを握って
この操作の向こう側にある世界で生活している

モニターの中には家族
昔の人間のようにカラダを使い生活する
お父さん
お母さん
兄さん
妹がいる

みんな 飛行船に乗って宇宙のどこかにいて
それぞれの頭脳が彷徨っているけど
コミュケーションはバーチャルリアリティな文化のもと
家族は繋がっていから孤独を感じたことはない

昔はカラダ全体を使って生活したらしいけど
身体のほとんどは退化し
脳と指だけが進化を遂げた。
僕のカラダに胴体や足があるのはどうやら昔のなごりらしい

モニターの中
父さんはいつも自分の部屋でゲーム
お母さんも兄さんも妹もゲームをしている
僕はゲームが嫌いなので本ばかり読んでいて
最近は小説を書いたりしている
想像することが好きなんだ

朝昼晩に三回 リビングに家族があつまり談話の時間
みんなゲームの話ばかり
だから僕は自分の書いた小説を大声で読み出す
すると面白いから
その続きを聞かせてくれないか
みんながそう言ってくれる
こんな時に僕は家族がいて良かった
そんなふうに思うんだ

ちなみに僕が今 書いているのは
『遠隔家族の幸せ』って言う小説
退屈になるかもしれないけど読んでみるよ



僕は家族のカラダに触れたこともないし、実際に見たこともない。モニター越しの存在を知っているだけだ。物心がついた頃から宇宙を彷徨っているから、僕以外の人間に触れたことがない。お父さんが家族の談話で言っていたんだけど、我々がどこで生まれてどうして家族なのか分からないらしいんだ。分かっていることは、遠隔で繋がっている家族だ、ということだけ。
僕らの過去は、昨日も一昨日も先週も先月も去年もずっとずっとその昔も変わらず遠隔家族以前の記憶などない。分かりやすくいうと、ある日突然にあたりの前のように遠隔家族をしているって感じだ。モニターの中で僕ら、大昔に人間が歩いたり走ったりしていた頃のような原始的な生活をバーチャルリアリティとして体験をしている。ちなみに宇宙船にいる僕のカラダがどうなっているか、教えてあげるよ。まあ、人間が二足歩行を始めた頃のような胴体と四肢をもち、頭はあるけど動くのは目と左右の指だけ。それと額から三センチほどのケーブルが繋がっていて、生きるための栄養や電気信号がそこから注入されているらしい。
僕以外の家族は、胴体が短く足はなく手と頭だという話は聞いている。僕だけ大昔の人間の名残りで足が付いている。まあ、動かないけど。自分のカラダの状態を把握しているのは、モニターに鏡機能が付いているから容姿が見られるから。でも、その画像をパソコンで公開することにセキュリティがかけられているから、家族のカラダに関しては画像で見たことがない。なんのためのセキュリティだか分からないけど、僕らの生命は誰かに管理されているのだろう。だから、家族のほんとうの姿は分からない。僕に与えられている世界は、実体験で宇宙船から見える星々と遠隔家族で全てということだ。

では、僕の家族を紹介するよ。まず、さっき登場済みのお父さんとお母さんと姉と僕の四人家族。お父さんは今はゲーム中毒と言っていいだろう。モニターの中では、自分の部屋に閉じこもり、談話の時間以外はずっとゲームをしている。最近では、宇宙船レースとかいうのにハマっているらしい。そんなお父さんだけど僕は尊敬しているし、精神が強いことを知っている。あの襲撃があった時にそれが分かった。お母さんは、心配性で平和主義者。誰かが強い口調で怒り出したら、「どうしましょう、どうしましょう」といって、落ち着かないのである。そんなお母さんもやはりゲームにハマっていて、今はコンタクラマとかいう星に花を育てて、癒しの世界をつくっているみたいだ。姉は、恋バナゲームにハマっていて、家族の談話では「私の彼は、イケメンで優しいのよ」とか話し出す。僕的には、もううんざりな話に頷くのもいい加減で、「あんた、聞いてる!」とかいわれ、もうどうでもいいよ姉ちゃん、って感じ。でも、僕の小説を一番に楽しんでくれているので、たまに恋愛モノの小説を書いて読んでもらったり。まあ、仲はいい方だと思うよ。
なんか、どこにでもある遠隔家族なのだろう。実際のほかの家族についての情報は与えられず、家族一般論とかいうデーターが与えられているだけ。それだけが僕らの家族としての概念となる参考資料だ。その話は長くなりそうで、つまらないので次回の小説にでも書こうと思っている。
ああ、さっきもすこし触れたけど、僕らの家族がぞっとするような襲撃を受けるという体験をした。それをこれから話してみるよ。

あれはいつものように談話をしていた時だった。リビングでテーブルを囲みお父さんがゲームのオンライン宇宙船レースの話をしていた。高得点で世界ランキング一位になった自慢話で、みんなで「おめでとう」なんていってお祝いの言葉などを掛けていた。
そんないつもと変わらない平和を意識することなく過ぎて行く時間に突然、あの一発の銃声。初めて聞くガラスの割れる音に慄く。お母さんと姉は「キャー」と叫びテーブルの下に身を潜め、お父さんは四つん這いになり窓に近づき外の様子を伺っていた。僕は椅子から転がり落ちた。いったい、誰がこんなことをしているんだ。今まで銃弾が飛び交うことなどなかった。モニターの生活は平和そのものだったから、度肝を抜かれた。僕は窓の外に人間を見た。このモニター内で見る家族以外の初めての人間だ。

家の周りには芝が植えられて、その先は森が広がりとても視覚的に癒される設定になっている。家の外には出たことは誰もない。バーチャルな世界とはいえ、ゲームの世界より非常に狭いところで生活している。
そんなことよりその人間について話そう。僕もなんとかお父さんの背中に隠れ、外の様子をみようとした。男が迷彩服を纏い、ライフルを構え持ち、いつでも打ち込める態勢でリビングにいる僕らに照準を合わせている。しかもその男は髭を生やし黒のゴーグルをしていて、表情はまったく分からない。
初めての家族以外の人間は、僕にとって特殊な感情を芽生えさせた。得体の知れない人間からから感じる不安な感情は、いったいこれは…。
そうだ、これは恐怖だ。前に読んだフロイトとかいう人物の本、不安やら恐怖のことが書いてあるのを思い出していた。自分の感情を見つめてみると、すこし冷静さを取り戻してきたのか。「不気味なもの」からの対象の喪失が不安を源泉として恐怖があるとか書いてあったのを思い出した。すると、喪失するのは僕らだという恐怖となり、あの人間に撃たれてしまえばモニター内の家族関係を絶つということによる恐怖だ。それだ。

どうすればいいんだ。男は銃を構えたままリビングに近づいて来る。お父さん、お父さん、って音源の壊れた音楽のように僕は繰り返していた。いつもゲームばかりしている呑気な父親だけど今、目の間にいるお父さんの顔は違っていた。恐れの向こう側を見ているような目をして、視線の真っ直ぐさと強さを感じる表情に僕は一瞬、時間が止まっていた。お父さんは、お母さんと姉さんがガタガタと震えて寄り添っている姿を振り返り一見すると、窓の男を覗きながら語り出した。

「みんなよく聞けよ。あの男は、遠隔家族の人間を捕獲するハッカーのハンターだ。
遠隔家族に一度必ず襲う人間狩りという現実。この日が来てしまったか。奴を倒せば、我々の平和な生活は取り戻せる。しかし、それが出来れなければ我々は永遠に家族という構成員での生活は消滅してしまう。だが、大丈夫だ。俺がどうにかする。この時のために作戦は練っていたからきっと上手くいく。お前たちは知らないだろうが、我々には拳銃が一丁与えられていたんだ。しかも、玉は一発しかない。俺が外に出て男を引きつけて打つ。どんな状況になっても信じろ、俺を信じろ」
そう言うとお父さんは、自分の部屋に戻り銃口の短めな拳銃を片手にやって来た。
「お父さん、お父さん」僕たちは、それ以上言葉が出なかった。
するとお父さんは、窓を開け外へ飛び出す。

ヴァーン

大きな銃声が呆気なくお父さんに響く。

「お父さん」

僕らの呼びかけは悲鳴に変わった。
もうすべて終わった。僕らの家族は消滅することを覚悟した。男はお父さんに近づいてくる。うつ伏せに倒れているお父さんを蹴飛ばして、カラダを仰向けに転がした。
その時、奇跡が起きた。

ヴァーン

お父さんの腕が空に向かって挙がり、握られていた拳銃から銃弾が放たれた。男は頭部を大きく後ろに仰け反らせながら倒れた。僕は何が起きたのか分からない。
ただ、お父さんは生きていて、男が倒れたということだけだ。

そして、お父さんは「ヨシャー」と雄叫びをあげながらリビングに戻って来た。僕がいったいなにが起きたんだ、とお父さんに興奮して言った。

「ああ、外へ飛び出して撃たれた真似をして倒れただけだ。奴らは人間収集が専門で、必要以上にカラダを傷つけないよう無駄撃ちはしない。まずは撃った後の獲物の様子を見にくると予想したんだよ。まあ、この日がいつか来ると思い、撃たれて倒れる練習は散々していたからなあ。みんな知らないだろう」

その達成感は、苦笑いと微笑みが相まっているような表情に出ていた。
お母さんと姉さんはお父さんに駆け寄り抱きついた。涙を流しながら、心配したと訴えていた。お父さんは「だからどんな状況になっても俺を信じろ、って」と、勝ち誇ったように言っていた。

これで僕たちの遠隔家族の平和な生活は取り戻すことができた。なんか、お父さんばっかりがカッコいい感じだけど、僕は強いお父さんを心から尊敬している。僕もお父さんのように強くならなくちゃ、って。


終わり
いやㅤつづくかも!


なかなか面白かったでしょ
そりゃ 僕のフィクション小説だから
読んだら幸せになるのさ
だってㅤ僕たちの家族は遠くにいても繋がっているから

#小説 #詩

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