ー旧陸軍兵の日章旗“帰郷” 日南出身の故火山行一さん 81年ぶり、遺族に返還 息子の司さん「おやじの姿」喜ぶー
米国で元米兵(個人)が所持していた日南町出身の旧陸軍伍長・故火山行一(ひやまゆきかず)さん(享年23歳)の寄せ書き入り日章旗が見つかり、遺族への返還式が25日、同町霞の町役場で行われた。一人息子の司さん(81)=米子市上後藤4丁目=は、遺影でしか知らない亡父の唯一の形見をしっかりと受け取り「一つの区切り。胸のつかえが取れた」と、81年ぶりの“帰郷”を喜んだ。
行一さんは1943年に出征。独立戦車第1旅団砲兵隊に所属し、45年8月17日に中国大陸の奉天(現・瀋陽市)で亡くなった。長年生還を願っていた母・あさえさんは2000年に80歳で亡くなった。
連合国軍兵士が戦地から持ち帰った日本兵の遺留品の返還活動に尽力する非営利団体「OBON(オボン)ソサエティ」(米国オレゴン州)によると、元米陸軍兵ベルナルド・ステイン氏の他界後、日章旗を譲り受けた孫が2017年に遺族の捜索と返還を依頼。日本の遺族会ら関係機関の協力を得て、24年春に遺族が判明した。
返還式では、同ソサエティ捜索担当の工藤公督氏が判明に至った経緯を説明し、同町の中村英明町長らの手を経て司さんへ日章旗が手渡された。
丁寧に折りたたまれた日章旗を広げた司さんは「早く母の墓前に報告したい。日章旗を通じて、長年知ることのなかったおやじの姿やにおいを実感できれば」と話した。
参列した町遺族会の野口忠実会長(86)は「火山家の宝であるともに日南町の宝。できれば多くの方にご覧いただき、平和とは何かということを実感してもらう機会となれば」と期待を寄せた。