死があって生がある
10月
13日
彼は日本に帰国後、大学の政治学の先生として活躍していましたが、ある日、肝臓がん末期と診断され、それから闘病生活が始まりました。
彼とは、東京のマンションが同じということもあり、私が帰国する度に会っていました。
私より五歳下でしたが、彼の生き様は大変勉強になりました。
新薬をテストする『治験』を自分の治療手段に選んでいました。
一時体調が良くなられた際、ロサンゼルスを再訪され『死があって生がある』と題して講演されました。
「死ぬまでしっかり生きる!」の言葉通り、彼は頑張りました。
「死は怖くない?」と聞いたら、「どうせ人間死ぬよ。病気かもしれないし、また不慮の死だってあるじゃない。怖がってどうするの、普通に生きるだけだよ。」と、強がりでなく、淡々と言い切ったK氏の姿が私の脳裏に焼き付いています。
一日一日をしっかり生きることが大切なんだと、改めて思いました。
亡くなる二日前、K氏から「いつ日本に来るの? 美味しいところ見つけたから早くいらっしゃい!」と電話がありました。
声は元気でしたが、そのすぐ後で「実は明日から入院して手術することになった。」と付け加えました。
私は、「あなたは不死身だよ、退院できるよ!」と言って励ましましたが、これが彼との最後の会話になりました。
人間の一生に於いて『余った人生』なんてありませんから、『余生』という言葉は使いたくありません。
私は、これからの時間は『おまけ』だと考え、日々感謝して有意義に生きようと考えています。
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