長期ビジョン (ラッコ横山)
12月
5日
久しぶりに手に汗を握る場面を体感できました。普段は別々のユニフォームを着た選手が、日の丸を背負うことで国の威信をかけて戦う同志となりました。長嶋監督も王監督も試合後に体調を壊し入院あるいは手術を強いられるほどのプレッシャーが日の丸にはこめられているのでしょう。その過酷さは想像もできません。
たくさんの人が同じ目標に向かって力を合わせることはとても素晴らしいことです。ちょうど高度経済成長期の日本はこのような状態がずっと続いていたのでしょう。誰もが迷うことなく勉強に仕事に汗を流していたことでしょう。しかし、現代では豊かな生活背景がどんどん個人主義に流れています。自分さえよければよいという考え方が、いろいろなところで影響を及ぼしています。
先日、若い技術者の世界オリンピック「国際技能オリンピック」の特集を見ました。金型製造など製品化する前の最も大切な特殊技能を競うイベントです。20年前までは日本がダントツの強さを誇った大会も、今では韓国をはじめアジア各国が追いつき追い越す勢いを見せています。選ばれた世界の若者が4日間もの長丁場で技を競い合います。
日本はこの20年で多くの製造現場を海外へ移行しました。同時に技術も海外へ輸出しました。そのことが国内の技術力向上を抑制し、さらには有能な技術者が活躍する場を失ったのです。今では各企業の中に「ものづくり塾」なる匠の技を伝承する場を設けないと消え行く運命にあるそうです。
結局、最も重視される金型では10年ぶりに日本の若者が優勝しましたが、金メダルの数では圧倒的に韓国の勝利となりました。国家を挙げて取り組んだ結果です。国と企業そして工業高校の連携が多くの有能な技術者を育てる取り組みになったようです。
最近のOECD発表によると、日本の子ども達の理数系離れと読解力の低下が顕著でした。高い学力も高い技術力も、ともに国を支える大事な力です。国を挙げての取り組みが急務なようです。まずは家庭でできること、自ら学ぶための訓練や創造するゆとりを大切にしていきたいものです。
10年ぶりに金メダルをもたらした若者を育てたコーチのコメントです。「全ての技術を教えることはしません。結局は自分で悩み工夫して考え出せてこそ、有能な技術者なのです。」
ラッコ横山