時に悲しみは、負の感情として忌避されることがある。しかし、柳が言うように、悲しみが故人と生者とを繋ぐ大切な〈場〉となれば、残された者にとってその感情はかけがえのないものとなる。 そうであるならば、その感情は忌避され続けるものではなく、やがて生きる力へと転換されていくものであると言えるであろう。 柳は、自身の悲しみに向き合う中で「涙なき思想をまことの思想と呼ぶ事は出来ぬ」と、悲哀の涙から生み出される思想こそが「まことの思想」であると語るのであった。