結婚してすぐ家を建てた。鶴の飛んでいる布団、家に似合わない婚礼家具などを断って「お金」をお願いした。 公園の前の緑あふれる分譲地に家を建てたのはン十年前。見栄をはってモデルハウスとほぼ同じにした。夢が実現したそのときから借金生活が始まった。 折りしも住宅ローンは8.3パーセントの高金利時代。月に12万円、ボーナス月は40万円の支払いが延々と続く。 お金持ちには、何のことはない金額でしょうが、1馬力のサラリーマンにはつらい借金でした。月家賃が60万円のマンションなんてふつーにありますからね。 車のローン、教育ローンなど、多くの借金をかかえ、退職金の前借のようなこともしました。 そして今、細々と年金生活。 たくわえはほとんどないが、借金もない。そうなると月額14万円というお金で暮らすしかない。「ある分のお金で暮らす」と割り切ると気が楽になる。 「ないものは、ない」のである。あるもので暮らすしかない。 お金があれば世界も広がる、おいしいものが食べられる、ピカピカの車に乗れる。 だが、お金がなくても、心豊かに生きられる。 かわいい孫に囲まれ、人の親切がうれしい。若いときに読みそこなった「中井英夫」や「辻邦生」をの本を開くのもいいだろう。 ぼやぼやしていると、オクラやかぼちゃの種まきを逃してしまう。近所の家にヤギの子どもが2匹生まれた。のどかな鳴き声を聞きながら「サラダほうれんそう」の種を蒔く準備をする。 酸性土を嫌うからね。石灰をまいておかなくちゃ。 確かに、通帳の残高が底をつきそうになると、ストレスがたまる。 バイト生活でも、パートタイム仕事でも、年金生活でも「ある分のお金で暮らす」ならなんとか生きていける。 カードなどは捨てて、借金をしないことがいちばん心の健康にもいい。