秘密保全法制 「知る権利」を侵すな
10月
15日
より
政府が進める秘密保全法制は、外交などの秘密をさらに厳重な国家管理下に置くものだ。国民の「知る権利」を侵しかねない法律制定に強い懸念を持つ。
秘密保全法制が射程に入れているのは(1)国の安全(2)外交(3)公共の安全および秩序の維持-の三分野である。
行政機関が所有する秘密情報の中でも、重要なものを新たに「特別秘密」と規定して、保全措置の対象とする。故意に漏えいした場合は、懲役五年以下か、十年以下の厳罰を科すという。
◆あいまいな特別秘密
国家公務員ばかりでなく、事業委託を受けた独立行政法人や民間事業者までも適用対象となる内容だ。政府は次期通常国会に提案する方針である。
まず問題なのは、特別秘密とは何か判然としていないことである。政府の有識者会議の報告書では「事項を別表などで具体的に列挙する」としている。
ただし、秘密の指定はそれぞれの行政機関が権限を握る。これでは行政の恣意(しい)が働く恐れがある。政府・行政にとって、不都合な情報は意図的に特別秘密と指定することができよう。
報告書では特別秘密について、形式的な秘密ではなく、保護するに値する実質的な秘密であることを要件としている。しかし、「実質秘」だと判断するのも、行政機関に任されているから、結果的に不都合な情報は覆い隠される。
そもそも、この法制は昨年、尖閣諸島沖で起きた中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突事件をきっかけに着手された。海上保安官が衝突ビデオの映像をインターネット上で流したことが、政府の逆鱗(げきりん)に触れたのだ。
国家公務員法の守秘義務違反に当たるとこぶしを振り上げてみたものの、検察側は刑事責任を問うのは困難だとして起訴猶予処分の判断をした。
◆情報公開の改良こそ
このため、当時の仙谷由人官房長官が「抑止力が十分でない」と発言し、有識者会議を立ち上げたのが経緯である。つまり、政府にとって尖閣ビデオ問題は、外交上の不都合な情報を隠したかったからに他ならない。
衝突映像を多くの国民はネットやテレビで目の当たりにした。こうした情報をも特別秘密として、政府が秘匿し続ける可能性があるのだ。まさに情報統制そのものではないか。
むろん公務員は萎縮するに違いない。守秘義務違反なら一年以下の懲役などの定めがあるが、これが大幅に厳格化・厳罰化されるからだ。
取材の自由への脅威にも十分になりうる。「正当な取材活動は処罰対象とならない」としているものの、公務員への「そそのかし」は処罰対象と判断される恐れがあるからだ。取材活動は国民の利益にかなう情報について、知恵や努力を働かせ、相手を説得して獲得するものだ。説得行為をそそのかしとみなすのだろうか。
有識者会議の報告書は、違法な取材の事例として、「沖縄密約」を暴いた外務省機密漏えい事件を挙げた。だが、密約は政府が「沖縄をカネで買い戻すという印象を持たれたくない」と隠し続けたものである。
返還協定に含まれない巨額な「秘密枠」などのカネは、密約であるがゆえに、国会の承認を受けることなく、米国に支払われた。議会制民主主義を無視した歴史の汚点でもある。
同種の情報を特別秘密として封殺できるのが、今回の法制の特質でもある。外交などに秘密が伴うのは理解できるとしても、憲法を踏みにじっていいはずがない。「知る権利」を脅かす法制は、民主主義への挑戦状とも受け止められる。
福島第一原発の事故でも、政府や東京電力などは重要情報を秘匿したり、情報操作を続けた。放射能の拡散予想を長く公開しなかった事実などは、国民の生命や財産をないがしろにしたのと同然だ。
時代の潮流は、情報を閉ざすことではなく、情報をできるだけ国民に公開することだろう。
情報公開法に「知る権利」を明記することで、行政サービスではなく、行政機関の義務として公開するという発想に百八十度転換できる。同法の改正こそ目指すべき方向である。そもそも「開かれた政府」は、民主党の党是ではなかったのか。
◆悪夢の再現ではないか
一九八五年の中曽根康弘首相時代に「国家秘密法案」が出されたが、メディアや世論の反対によって廃案に追い込まれた。悪夢がよみがえったような印象である。政府情報に投網をかけて丸ごと覆い隠すような法制には、強い憤りを禁じ得ない。
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恣意的なことってのが無くならないのですから、この時代、このタイミングでこの法案
は、不信の極み法案とでも呼べましょうか。
いちいちこんなの作らなくてもと思いますが。
作らないといけない局面を作ったのは誰か。
政権与党になってみて、パンドラの箱を開いてみたら、やっぱり閉じましょうってことで
しょうかね。
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