「彼」はハンス説に、ものすごく賛同する。
ただそれは、単純に偽善者だからとか、
裏切者だからとか、そういうことではなくて。
「彼女」の望みを叶える「鏡」だから。
恋人を愛し、慈しみ、
心無い「誹謗中傷」にも耐え、
「お姫様」を「窮屈な牢獄」から連れ出してくれる、
「理想の相手」だから。
だけど。
はたして本当に、
「彼」は理想の相手なのだろうか。
「彼」が映し出すものが、
「彼女」であるうちはいい。
けれど、ずっとそうであると、
どうして言える?
鏡が映し出す相手が「継母」に変わった時。
無垢な「白雪姫」は「毒リンゴ」を食べることになるかもしれない。
それを心配し、気づいてほしいと呼びかける声までも、
「彼女」は一方的に「誹謗中傷」と決めつけて、
ひたすらに「彼」を庇い続けた。
「彼が独断で動いたことなどありません」、
「彼は私の望み通りに動いてくれたのです」。
それを主張することに、
いったい何の意味がある……?
むしろ、それを主張することが
どれほど危ういことなのか、
まるで気づいてはおられないようで。
不敬ながらも、誠に呆れかえってしまいます。
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