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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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自分の声

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日に暖められたベンチに座り
娘から自分には似合わないからと
5000円で買わされたヘッドフォン
ボリュームを真ん中より2つ上げ
イギリスのルーズなロックを流している
 

自転車で風を切る学生
「イケてないおじさん」
 

ボールを蹴り通り過ぎる若者
「おっさんの足が邪魔だな」
 

犬を散歩する夫婦
「そっちはダメよ。怖そうなひとがいるから」
 

杖をつき歩く老人
「わしはそこに座りたいんじゃ、どいてくれ」
 

声の聞こえない他人なのに
自分に他人の声として聞こえてくる
気を遣った自作の舞台ではひとりになれない
そんな自分をもまだ嫌いにならないのは
幼き頃に微笑んだエクボの想い出があるからだろう
 

時間は手にしていたタブレットへ涙を落とす
亀を傍観し玉手箱もなく曜変天目のような青は
怪しく液晶の上を流れた悔し玉
終わっちゃいないのに終わりにしている
聞こえてくるのは「チクショウ」と「何で」
消えてゆくのは「どうでもいいか」
そして今に焦り前向きを探している
 

もう砕けている脊椎
唾液で薬を流し込めば次の一歩を
歩けるという確信に騙されて
ベンチに張った根に肉片を散りばめ
立ち上がれた現実にヘッドホンを外す
 

ああ聞こえてくる
 恐れるな自分を可愛いがるな自分を
 恐れるな自分を可愛いがるな自分を
 恐れるな自分を可愛いがるな自分を
 

初めて聞こえた言葉に歩けそうな気がして
冷たくもある自分への愛により今
創めの一歩が歩けている
 
 
#詩

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