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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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  • オジサン子ども

オジサン子ども

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私は三歳。ひとは私のことを天才児だと言うが、
前世の知能がそのまま残されて生まれた人間と
いう特殊な誕生をした。その前世でどのような
生涯を得たかは全く分からない。頭の中だけが
オジサン。そう、私はオジサン子ども。客観的
に考察すると、まあ五十歳くらいの精神年齢で
あろう。知能はさほど高くないが、なんせ身体
が三歳なのだから世間は私を天才と騒ぐわけだ。
最近では雑誌、テレビ局やユーチューバー達が
毎日のように私を目当てにやって来る。玄関先
で彼らは母親に出演の交渉をするが、私はまだ
呂律の回らない口で「勝手に私の映像や記事を
流すなよ。きちんと契約を取れた相手だけゲス
トとして質問に答える。ああ、ダメダメ、そこ
の君、録画はダメだよ」と、言った感じで彼ら
の視線の下から話し出す。私の喋りに気持ち悪
がって帰ってしまう者もいるくらいだ。母親は
若く、まだまだ社会経験が少なく騙されやすく
心配の元だ。父親? ああ、そりゃ酷いものだ。
私が再教育したいくらい浅はかな思考の持ち主
で、仕事はろくにしないし、どこからか見つけ
てきた日付の切れた添加物の多い弁当を、三歳
の私に食べさせようとしたり、時には夕ご飯が
抜きとか、一家をきちんと養っていない、どう
しようもない父親だ。まあ、こんな家族に生ま
れて来たら、私がしっかりしなくてはならない、
となる。三歳にして一家を何とかしなければい
けないというのが現状だ。そんな私は最近、キ
ショい子どもなんて言われる。この状況での私
の気持ちなどわかる者などいない。近い将来、
もう少し身体が発達し、パソコンのキーボード
が自由に打てるようになれば、自分の特殊な存
在を生かし、自から世界にジャンジャン配信し、
ユーチューバーとしてこの家族を裕福にするこ
とができるだろう、そう考えている。これが今
の私の夢だ。夢ってほど大したことじゃないな、
目標ということにしておこう。もしかして私は
前世で家族を幸せにできなかった後悔とか持っ
ていたのだろうか。まあ、分からないことは考
えても仕方ない。人生は一度きり、いや二度目
か、そんなわけで楽しんでオジサン子どもして
みるよ。私の身体が大人になれば普通のオジサ
ンになる。それまでの勝負だな。

#詩

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