電車に乗り込み寒さは凌げた すぐにホームボタンで指紋認証 部屋が片付かないように デバイス上の書類項目も 煩雑に散らばって ふと見る車窓からの薄暗い空 雲もまだ眠っている 寝ているものを眺めては 揺られ向かう先へを繰り返す 弱気な心 車内には 自分自身を見つめる人びと 一人一人がひとりに包まれる 細胞壁の中で 心模様はまだ薄い色で塗る 早朝のスケッチ 第三波と混み出してくる車内 身体を硬直させ力ませて 今日という一日に 小さな願いを込めながら 新宿駅で乗客が降りると ラインがひとつ届く 年老いた母の「元気ですよ」を 知らせるいつもの挨拶 おはようございます コロナには気をつけてくださいね 健康が一番ですから 薄赤く染められた雲が動き始め 溶け始める壁を感じ 「俺も元気だよ」を 伝える挨拶に少し照れながら