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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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私は逝ってしまったのだろうか
拝まれている

目の前には誰からも慕われる
八十歳を過ぎた詩人がホームに立つ
私は「お疲れ様でした」と
電車に乗り込み頭を下げていた

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」
何が始まったのだろう
大先輩の詩人は突然に手を合わせ
大きな声でお経を唱え始めた
なぜか私に

明日の事など分からないが
順番で言えば大先輩が先に逝くよな
そう心の中で呟いていたが
けして嫌悪感を抱くことはなかった
これにはきっと意味があるのだからと

電車の扉が閉まり
大先輩はまだ両手を合わせていた

車内にもお経が聞こえていたのだ
乗客たちは
降臨した者を見るような目をしていた
いったいこの状況は……

不思議な心持ちのまま自宅へ帰る
大先輩の詩から私が拝まれたヒントが
あるかもしれないと

百八名の詩が綴られた詩集を開いてみた
もちろんその大先輩の詩を拝読

ほとけさま

この詩の題目に思わず唸った
私に関することが綴られているかも
そんな馬鹿げた思考になりつつ
言葉を追いかけて行った先に
「ほとけさまが立っていた」と括られ
ありがとうの気持ちを
仏さまに伝えるだろうところで
終わっていた

大先輩のお経を唱える姿を思い浮かべ
私も今日一日の出来事に
ありがとうを伝えたくなり
手を合わせ南無阿弥陀仏と唱えた

#詩

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