バキュームな三丁目
11月
1日
いつもの君ではないみたいだ
なんだろう金魚みたいに
一点を見つめてゆったりと
くねくねしている姿は悪くはないが
突然のことで僕は開いた口が
塞がらない感じだよ
なんだ僕も一点を見つめているって
おかしいな腰がくねくね
あれれあれれ金魚になったのか
なっちまったようだ
まあ悪くないような気はする
人間をさよなら
向こうから黒マントの金魚が来るぞ
でかい目して大きな図体
ありゃ間違いなくボスだな
怖いから知らんぷりぷり
ねえねえ君ったらどこへ行くの
僕も連れて行ってよ
えっなんだって
どこにも行けないだって
僕らは金魚になったから
水槽から出られないっていうのか
そりゃそうだな
ああこの運命を受け入れるよ
ここは外よりは良いみたいだし
来た来たひとり来た
人間が覗いているよ
指でガラスを叩いているけど
なんだろうねあれは
こっちはストレスが溜まるんだよね
やめてほしいよ
彼も口が開いて一点を見ている
ああもうじきこっちへ来そうだな
ようこそ金魚の街へ
仲良くやって行こうぜ
そんなに悲しい目で
僕らを見ないで話をしよう
ああそうそう
黒マントには気をつけた方がいい
どうやら奴がボスのようだから
ほらほらまた
人間がこっちを覗いているぞ
ああ時間の問題だな
ほら来た来た来たよまたひとり
ようこそ金魚の街へ