ぶらんこばあちゃん
9月
3日
そんなことがあったのかい
ぶらんこばあちゃんは、公園のぶらんこにのり軽く揺れな
ながらいつものように空を見上げ
ほいほい、隣りはあいてるよ
ぶらんこで空を見ると気持ちがいい、飛んでしまうよ
失礼します
青年は少し緊張した様子をみせ、かすれた声を発し鎖を握
りゆっくりと座った
あんた、初めて見るね
ちょっくら疲れた感じがするけど
なんかあったのかい、わしでよかったら
話してみればいい、ひとは話すと心が緩むさ
はい、僕は大学生なんですけど
なんだか最近、気持ちが落ち込んでしまって
詩が好きで文学部へ入ったのですが
僕の周りには才能豊かな友だちばかりで
自分の詩はつまらないと思ったら
ぜんぜん、詩が書けなくなってしまい
あんなに好きだったのに興味が持てなくなり
何もする気もせずに生きていく気力さえないくらいで
そんな僕をみて友だちは、ぶらんこばあちゃんに
話を聞いてもらったらいいよ、といってくれて
ぶらんこばあちゃんは
青年の心境とは反対側にいるような微笑みをみせ
秋のどこまでも澄んだ青空を感じている
そうかい、そうかい
そんなことがあったのかい
詩が書けなくなってしまったのかい
そうじゃなあ、人間ってのは比べたがる生き物なのかね
自分のことが可愛いのだから仕方ないのう
けれど才能っていうのは、くじけた時に
這い上がって笑ってみせる力のことじゃないのかね
あんたに必要なのは
比べない努力と何のために詩を書いているのか
しっかりと自分に納得できる根っこみたいなものを
伸ばすこだとわしは思うんじゃがなあ
そしたらたくさんの言葉が葉っぱのようにでてきて
あんたという木はどんどん大きくなっていくさあ
青年はぶらんこばあちゃんの
揺れているぶらんこに自分も合わせだすと
頬をゆっくり滑る涙はキラリと光り
ぶらんこのぎこぎこと鳴る音が時を刻むようだった
ありがとうございます
とても心に響いてくる言葉をいただいて
なんだかすっとしたというか
やっとこの青空も目に入ってきたって感じです
詩を書き始めた時の気持ちを思いだしました
ぶらんこばあちゃんと話せてほんとうに良かった
あやや、あやや、良かったのはわしの方じゃよ
ぶらんこであんたと話せた幸せ
なんというかねえ
詩人だったらうまく伝えられるかもしれんね
そうじゃのう、この言葉にならないわしの思いを
詩にしてはもらえんかねえ
それはちょっと難しいかなあ
ぶらんこばあちゃんが登場する詩を書いてみます
なんか、書けそうな気がして
ほほう、そりゃ楽しみじゃのう
その詩をぜひ聞かせてほしいなあ
わしはいつもここにいるから待っとるよ
なんせ、この歳になってもぶらんこが大好きで
話すこともたまらなく好きじゃからのう