二十五年後バイク
11月
23日
バイクの納車なんだけど
その店がさあ
国道沿いにあって
教習所上がりの俺じゃ無理かな
それは父ちゃんがバイクに乗って
家までとりあえず
て、やつか
ああ、いいよ
おっとと
それにしても二十五年くらい
ご無沙汰しているなあ
準備体操しておこう
足をつってしまいそうだし
実際にまたがって
走り出すと右足をつり
足を伸ばしたまま走行
そして最初の左折で
膨らみながらなんとか曲がる
少しずつ
右足をステップに近づけ
ブレーキのステップに寄せる
よしょ
これで完全体になったぞ
しかし
なんなんだこんな時に
大粒の雨が落ちてくるし
メガネは曇り出すし
さあ
転んでくださいの
条件は整った
バイクは散々乗ってきたわたし
こんな時は減速なんだ
マンホールも
滑るから気をつけよう
アクセルを回すと素直に
エンジンが反応する
思い出すモヤっとした
若き日の
反骨精神やらやるせなさ
ああ
やっぱり歌っちゃうな
盗んだバイクで走り出す
行き先もわからぬまま……
自由になれた気がした五十の夜