僕 × 旅をする
7月
10日
このままじゃ駄目なことは
自分が一番わかっているんだよ
夏休みも終わってしまうし
なんせ退屈だから
よしゃ
目的のない旅へ出よう
だけど
旅先で夢を見つけて将来に向かってGO
そんな考えは微塵もないよ
とりあえず歩き出した旅は順調
こんなに空を
見たことがあっただろうか
心のように黒ずんだり
どこまで爽やかな青だったり
空は僕たちと変わらないような心もようで
寄り添ってくれることを教えてくれた
テントを張り
眠る前に夜空を眺めていた
星は誰かが言ったように
宝箱をひっくり返し輝いている
そんな夜空を見ていても
風で草が摩る音を聴いていると
人恋しくなってしまって
今日の一日を振り返える
すれ違う見知らぬ人に
声なんて掛けることはできなかった
ほんとうは誰かと話がしたかったのに
初めて知る孤独という言葉
僕が心を開かないと何も始まらない
そんなことを旅は僕に教えてくれた
日は当たり前だが昇って
くすぐるように僕を起こした
いい天気ですね
田植えをするおじいさんに言ってみた
僕の勇気を振り絞った声は震えていたけれど
ああ、お天道様のお陰じゃだなあ
おじいさんの言葉は僕にとって
この空より遥かに澄んだ青を感じた
おばあちゃん
荷物が重たそうだね
持ってあげるよ
僕は悪い人間じゃないから大丈夫
ああ、そうかい
ありがとうな
じゃあ、神社の前までお願いするわ
おばあちゃんは
お礼にキュウリを三本もくれた
何よりも忘れられないのは
その時に触れた皺くちゃな手に
癒されていたこと
ひとの温かみから大切さを教わった
まだ僕の旅は始まったばかり
旅が僕にいろいろなことを教えてくれる
日常の日々も旅も
もしかするとたいして変わらないのかも
そう思えてきた
でも
もう少しこの旅を続けてみよう
もう退屈なんて言葉は他人のごとのように