死ねない彼女が 余命三ヶ月の俺に言う あんたは死ねていいじゃないかと 俺の悔しさの向こうにある 青く尖った夜空 彼女の苦しさの向こうにある 赤く鈍い朝焼け 今、生きている互いの歩幅 途轍もないものに潰されながら ふたりはビニール傘の下 引き寄せる運命 歪な恋のキスは特別でもなく 俺の突起した恐怖と 彼女の窪んだ怒りが合わさるだけ 理由なんてないのさ 頬を叩いても罵声をあげても 俺たちは生きていて どうして生きているのか その答えはいつもわからなくて 俺は最期に言うだろう なんか生きているよ、って 彼女を感じて微笑むよ 彼女は目を閉じた俺に言うだろう 勝手に死ぬんじゃないよ、って そして、涙を流すだろう 俺はそんな彼女が好きなんだ なんか生きているよ、今 ああ、まだ生きている
投稿日 2016-11-06 13:47
ワオ!と言っているユーザー