僕の好きなツルさん
9月
13日
ツルさんは誰とでも話す
どんなモノとも話す
米屋のじいさんに会えば
今日もお互い生きているね
そうかと思えば
鯉のぼりと話している
今日もよく泳いでいるね
はあ
そうかい
そうかい
気持ちいいのか
うらやましいの
わしもむかしはあんたに負けず
泳いでいたよ
散歩中のツルさん
カラスに怒っている
ほい
ダメだぞ
畑を荒らしたら
あっちへ行け
クロちゃんや
僕はツルさんがなんだか好きだ
どんなモノとでも話せるから
とてもやさしいんだと思う
この間はあの世にいっちゃた
おじいさんと話してた
まだかい
まだなのかい
わしをいつ迎えに来てくれるのかね
そうかい
そうかい
まだおまえさんの準備ができてないのかい
それなら仕方ないの
僕は縁側に座っている
ツルさんのを見つけると声をかけるんだ
ツルさん
ほいほい
僕ちゃん
となりはいつも空いてるよ
僕はツルさんにくっついて座るんだ
背中が丸くて
顔が丸くて
かわいいんだ
ツルさん
縁側の板を見つめ
ほい
こんなところに大きなほくろが
あったんだね
長年つき合っていたけど
知らなかったよ
ごめんな
僕の落書きの消し忘れと話してた
おかしかったけど
ツルさん真剣だった
この間はあの世にいっちゃた
おじいさんと話してた
ツルさんの口ぐせは
ありがとう
ありがとう
お天道様
おかげさまで今日もいきいき
ありがとう
ありがとう
雨の日には
ありがとう
雨降り様
おかげさまで今日もいきいき
ありがとう
ありがとう
ツルさんに一度聞いてみたんだ
ツルさん
どうしていろんなモノと話すの
僕ちゃんだって
オモチャと話すじゃろ
それと同じだよ
そういっていた
そんなツルさんのことを
お母さんはいっていた
ツルさんは生き仏なのよ
僕はお母さんがいうことは
よくわからないけど
ツルさんがいるだけで
なんだかほっとできるんだ
僕はツルさんがとっても好きだ
だから
ありがとう
ありがとう
おかげさまで今日もいきいき
ありがとう
ありがとう
ツルさん
そんな気持ちになる