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放浪記:独身時代の不安を思い出す

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放浪記:独身時代の不安を思い出...


日本語の書籍が思うように手に入らないアメリカ暮らしで、時間を見つけては青空文庫の電子本を読んでいます。

青空文庫の電子本は著作権が消滅したものなので、言葉が古くて読みにくいのが玉に瑕ですが(書き起こしボランティアさんに感謝)、辞書を引きながら楽しく読めるものもあります。

中でもかなり読みやすい長編が、林芙美子の『放浪記』です。今まで読んでいなかったのが不思議なほどですが、昔確か読もうとして、途中で放り出した記憶があります。あの時は、この本に漂う、独身女性の不安な心境に波長を合わせる気持ちがなかったのかと。

すっかり年を取った今読んでみると、貧しさからその日の暮らしにも困りながら、根無し草のように体も心も落ち着く所を知らず、男性に頼りたいと願ってみては、すがった恋の消滅に絶望する独身女性の悲哀がひしひしと伝わってきます。私にも、これに一言一句違わぬ時代がありました。自由を謳歌していても、その土台は不安と孤独だった時代が。

『放浪記』は1928(昭和3)年から文芸誌『女人藝術』で連載され、好評を博して単行本化されます。‟あなたのような天才も100年前、私と同じように不安で孤独だったのですか”――そんな驚きに不思議と慰められる一冊。約100年前にベストセラーになった理由も、当時の人々が現代人の私たちと同じように不安と孤独を抱えて生きていたからでしょう。



青空文庫の『放浪記』:https://www.aozora.gr.jp/cards/000291/card1813.html

青空文庫『ある遊郭での出来事』https://jp.bloguru.com/RuCommunications/343364/2019-02-22

太宰治との山崎富栄の遺書 https://jp.bloguru.com/RuCommunications/362382/2019-12-04



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私とリチャードさんの対談もぜひお読みください。
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