ル・マン24時間レース 回顧録⑩

新型感染症が世界的に深刻な被害をもたらした2020年。
この年、それでもル・マン24時間レースへの挑戦を見届ける必要があった。
その回顧録を自分視点で、記憶が曖昧になる前に残しておこうと思う。
※プライバシー配慮のため、人名等はイニシャル表記にする
※そんなもん、いまどき検索すれば出てくるだろうが・・・
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現在2023年、2020年ル・マン24から4年目を迎えようとしている。文章を一気に書いていると燃え尽き症候群のようになってしまい、前回から随分時間を経てしまったが、記憶をしっかり記録として残せるうちに少しづつでも進展させようと思う。

【始動-3】
2018~2019年のY氏の動向は、記憶にも記録にも自分自身にとって少し遠い世界の出来事であったために、こうして時系列で記録として整理することで、今になっても改めて発見や考察があるのだが、この二年間のことはサラッと触れておきたい。いずれY氏自身や関係各位により詳細を確認して補完しようと思う。

あと、言い訳がましいのだが、ル・マンシリーズというレースは少し変則的な開催スケジュールだったり、Y氏の所属するチーム内のドライバー変更など色々と外からでは分かりにくい状況だったと記憶している。2020年を戦うチーム構成すら、具体的に把握できたのは実はその年の3月や4月あたりだったのだから。参戦していたY氏自身や、コーディネイターとしてシリーズに帯同していた元トヨタワークスドライバーF氏などは、具体的にしっかり把握されていただろうけど、あくまでも外野の立場としてはいつもヤキモキしていた覚えがある。

さておき、Y氏は2019年度はアジアンル・マンシリーズから飛び出し、いよいよヨーロピアンル・マンシリーズに参戦することになる。参加するカテゴリーは変わらずLMP3車輛である。

洋の東西を問わずル・マンシリーズはテレビ中継やメディア露出などがある大きなイベントレースである。しかしながらアジアンル・マンシリーズでは、世界基準グレードのサーキットを使用するとはいえマニアでなければ日本人には馴染みのないサーキットを走る(富士スピードウェイや上海国際はよく知られているが)のに対し、ヨーロピアンル・マンシリーズではエフワンマシンが駆け抜ける由緒と歴史の深いサーキットが舞台となる。

世界を走ることの出来るプロレーサーならともかく、アマチュアレーサーが国際格式の、しかもレースが好きなら必ず名前を知っているであろう憧れのサーキットを舞台として戦えるのだから、そういった話を聞くだけでも胸が躍るものだが、きっとY氏自身も緊張や不安と共にウキウキとした高揚感は有ったろうと想像する。
いや。後年、某自動車メーカークラブ会報誌へ参戦奮闘記を寄稿された際に実際そのように表現されている。以下、少しその記述を抜粋させていただく。

「テレビでしか見たことのなかったポールリカール、モンツァ、シルバーストーンなどの有名なヨーロピアンサーキットを駆け巡ることは大変楽しく、また各国を旅して美しい風景と名物の食べ物を味わったりという別の楽しみもありました」

プロだろうがアマチュアだろうが、レーサーとして走る性分なら、一度は海外の国際格式サーキットでレースをしてみたいものである。きっと誰しもが憧れ、夢に見るシチュエーションだろう。

レース屋として過ごす私自身にしたって、例えドライバーでは無いにしても、やはり世界各国を訪れる際には必ずその地のサーキットへ足を延ばす。これはライフワークと呼んでも相違ないかも知れない。テレビでしか見たことのないその場に立つ、しかも見て、聞いて、感じるだけではない。Y氏はレースに関わる者なら羨むその場でレースをするのだから、本当に夢のような世界だ。

とは言っても、それは外野だからそんな呑気なことを言って居られるのであって、実際には多忙な仕事のスケジュールを調整しながら参戦し、いくら憧れのコースであってもピットガレージとアスファルトの景色はどこも似たようなものだし、レースウィークに求められる「やらなければならないこと」も毎度お馴染みのルーティンとなる。これは結局のところ、日本でも世界でも「やることは同じ」ということになるのだが・・・。



ただただ旅行で訪れるだけのご陽気さんとはワケが違うのだし、しかも、メンタル面だけでなくフィジカル面においても相当なストレスをかけるLMP3マシンに乗れば乗るほどクタクタに疲労困憊することは想像に容易い。しかも、普段走りこんでいる鈴鹿サーキットや富士スピードウェイならともかく、レースウィークの舞台は「テレビでしか知らない」コースレイアウトである。その高いレベルのハードルに順応しなくてはならない。

そんな中、あの事故は起こった。
(つづく)

#ルマン24時間レース

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