牧師、バイカー、鮨職人として。。。シェア from LA
第63話 ホーリーグラウンド篇
⑤「フード・ミニストリー」
行き場を失った様々な人々を受け入れて来たホーリーグラウンド教会は、毎週水曜日の夕方に低所得者らに向けて食糧支援を行う「フード・ミニストリ―」もしている。興味津々で一度見学に行ったことがある。そもそも同教会は低所得者らが居住する地域にあり、加えて周辺は工場や倉庫なども林立しており ずいぶん殺風景な場所にある。
その頃、すでにホセ牧師は退職し、故郷のマイアミへ戻って行ったので、彼のパートナーとして共に牧会してきたマーティン牧師が引き継ぎ運営していた。彼も元ギャングで相当なワルだったが、今は神と地域に仕える身で、その日も陣頭指揮を執っていた。見ると、粗末な折り畳みテーブルを長く一列に並べ、その上にペットボトル飲料や2ガロンのボトルに入ったミルクやジュースのほか、スナック類や缶詰、ピザやサンドイッチなどが箱入りで並べられ、訪問者も1列に並んで欲しいものを受け取っていく仕組みだ。その日は100人ばかりの人がやって来た。
これら食糧の殆どが地元のスーパーマーケットやレストラン、コカ・コーラなどの工場や、“ピザハット“、”タコベル”、マクドナルド”など大手外食チェーンの店舗からの提供品だ。ガラの悪い牧師が小汚い場所で運営する教会ではあるが、市やコミュニティにしっかり食い込み、大手企業の賛同も得るとは大したもんだ。
さらに目を見張ったのが食糧品の受け渡しを担当する多くのボランティアたちだ。彼ら彼女らは今でこそ教会メンバーだが、かつてはホームレスや失業者など、行くアテもなかったような人々。今はキリストと出会い、罪が赦され、癒しと再生を経験しつつ、困っている人を助け、日々イエスに従い奉仕に励む。つまり「助けられる側から助ける側へ」と成長したのだ。なるほど!「救われたのは救うため」とは正にこのことだ。
教会に助けや癒しを求めて来る人は多い。教会とはそういう場所だ。しかしいつまでたっても「してもらうだけ」の人も多い。それはNGだ。その結果、教会に何年通っても子供のように未熟で、いつも不満タラタラ、喜びがなく暗い。だが心配無用。ここにその解決法がある。“イエスのファン“ではなく弟子になること。イエスに従い、彼から聖霊の力をいただき、他者を助けることによって”自家発電”のごとく自身が強くなる。そういう人が増えることによって世の中は良くなれるのだ。
「こうして、聖なる者たちは奉仕の業に適した者とされ、
キリストの体を造り上げてゆき、ついには、私たちは皆、
神の子に対する信仰と知識において一つのものとなり、
成熟した人間になり、キリストの満ちあふれる豊かさになる
まで成長するのです。」
エペソ人への手紙4章12-13節:共同訳
4-9-2022
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第62話 ホーリーグラウンド篇
④「無期懲役を食らった男 後篇」
又しても「神の声」を聞き、命を賭けて当局に情報を流したヘクター。そこからは推して知るべしだった。セルメイト(同房者)らは彼を疑い、来る日も来る日もリンチにかけた。正にいつ殺されるか分からない状況が続いた。他方、刑務所、警察、地方検事らは捜査を開始、同時にヘクターの命に危険が迫っていることに気付いた。「ここから出してくれ! よその刑務所に移してくれ!」と何度も訴えたが “お役所仕事“でサッパリ進まない。しかし、毎日のようにボコボコにされるいっぽうで、捜査への彼の献身ぶりも検事らは評価し始めていた。ついに4年が経ったある日、他の刑務所へ移送されたのだ。彼は生き延びた。。。
この頃になると、ヘクターを見る周囲の目は相当変わっていた。単にキリストを信じた模範囚であるだけでなく、命にかかわる危険を犯してまで捜査に協力したことや、キリストと出会って生き方が変わり、どんな事にも誠実に取り組む正直さにより、彼の更生が見かけだけでなくホンモノであることは誰に目にも明らかだった。そしてさらに4年が経ちついに奇蹟が起きた。ヘクターは釈放された!
奇しくもそれは、彼がサンタアナ拘置所にぶち込まれたのと同じ5月だった。ヘクターは振り返る。「ちょうど15周年の時だぜ! 神さまは本当に粋で不思議なプレゼントしてくださった!」 元はと言えば、「ここから出してくれ!」と神に向かって叫び、「ならば罪状を認め、悔い改め、わたしに従え」と言われる神の命令に従った結果、無期懲役を食らったことから始まった。そして彼は神に従い通した。そうして奇蹟は起こり、「神は、ご自分の言うことを聞く者の言うことを聞いてくださる」事実を立証し、同時に神が正であることも証明してしまった。
ところで、服役者が釈放されたところで行先はなく、金も仕事もない為にアメリカでは再犯者の約7割(日本は約5割)が刑務所に舞い戻る。しかしヘクターの場合は警察がホーリーグラウンド教会を紹介してくれたのみならず、彼の正直さを買われ、LAPD(ロサンゼルス市警察)のギャング更生プログラムのファシリテーターとして働けるようになった。まだある。何と彼を担当する地方検事が“出所祝い”に車を買ってくれた!
その検事さんは女性で、クリスチャンではないものの、ヘクターが生まれ変わったのを目の当たりにして心から喜んでくれた。最後には当座のお金も工面してくれたそうな。「神さまは誰でもお用いになる好例さ。彼女にも伝道したよ。今も彼女の救いを祈っている」と話す彼は優しい目をしていた。
あれから約10年が過ぎ、私は本稿を執筆するにあたり彼に連絡した。今はサンフランシスコで暮らし、クリスチャン系の福祉事務所で働いている。「神さまは今も私を導いてくださっている。」とのこと。 ハレルヤ!
「あなたがたが、わたしの名によって何かをわたしに求めるなら、わたしはそれをしましょう。もしあなたがたがわたしを愛するなら、あなたがたはわたしの戒めを守るはずです。」
ヨハネの福音書14章14-15節
4-3-2022
もしあなたが神をそばに持っているなら、全ては明白になる。
アイルトン・セナ
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第61話 ホーリーグラウンド篇
③「無期懲役を食らった男 中編」
拘置所の礼拝で、突然、神の声を聞き、罪状を認めたために無期懲役となったヘクター。「すごいね。イエスを信じたばかりなのに、一生刑務所にいるかも知れないリスクを冒してまで神の声に従うなんて、誰にも出来ることじゃないよ。君には その時 “100%の確信” が与えられたということだね?」
私は彼へのインタビューの手を止めて聞いてみた。それに対する彼の答えは意外なものだった。
「いや、まだ100%ではなかった。いい加減な感じだったと思う。でもとにかく従おうと決めたんだ。」私は驚いた。しかし彼は福音と救いの根幹をなす重要なことを言っている。神への信仰とは、「神への服従」を意味するからだ。まだ信じたばかり。洗礼も受けていない。聖霊も神学も知らない。ただ神を信じて服従し前へ進む。これが真の信仰者だ。そして必ず試練の時がやって来る。神はご自分の子供を愛されるので、それぞれを鍛錬し造り変えようとされる。
彼は模範囚として歩み始めたが、その道は平坦ではなかった。なぜならアメリカの “ムショ” では模範囚は嫌われイジメられるから。牧師のアシストを受けつつ 祈りと聖書に専心し、どうにか無事に過ごしていたが、6年ほどたったある日とんでもない事件が起こる。彼のセルメイト(同房者)の麻薬使用が発覚し、アメリカでは刑務所犯罪が日常茶飯事なので当局も動き出した。ヘクターは同房なので誰がどのように麻薬に関係しているか知っている。その時、突然「お前はこれを見て見ぬふりをする気か!」と神の声が再び聞こえたのだ。
「神さま、それはチンコロ(告げ口)せよということですか? そんなことをしたら私は殺されます!」彼は震え上がった。「チンコロ」。ムショでこれほど危険なことは他にない。バレたら命はない。すると「わたしを信じるのではないのか?!」と再び図太い声が。無視しようとしたが日々その声は彼の心にこだまし大きくなっていく。彼は祈り、悩み抜いた。そしてついに彼は腹をくくり全てを神に委ねる決意をし、当局に情報を流した。神に従ったゆえに無期懲役となった彼が、さらなる神の救いと御心を求めて命を賭す!
「あの時が俺にとって “確信” の時だった。。。」 ヘクターは振り返った。そして、この域に達した者はもはやブレない。聖霊が心に住み、イエスと一心同体に歩み始め、自分では出来ないことも可能になる。だが、彼には地獄の日々が待ち受けていた。そして、闇の向こう側に指す復活の光を彼はまだ知る由もなかった。
「あなたがたの確信を投げ捨ててはなりません。
それは大きな報いをもたらすものなのです。
あなたがたが神のみこころを行なって、約束のものを手に入れ
るために必要なのは忍耐です。
『もうしばらくすれば、来るべき方が来られる。
おそくなることはない。わたしの義人は信仰によって生きる。
もし、恐れ退くなら、わたしのこころは彼を喜ばない。』
私たちは、恐れ退いて滅びる者ではなく、
信じていのちを保つ者です。」
へブル人への手紙10章35-39節 3-31-2022
つづく。。。
誰でも偉くなれる。誰でも仕えることが出来るから。
奉仕に大卒の学歴は要らない。
プラトンやアリストテレスを知らなくても構わない。
唯一必要なのは、恵みに満ちた心、愛情 豊かな魂である。
マーティン・ルーサー・キング Jr.
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第60話 ホーリーグラウンド篇
②「無期懲役を食らった男 前編」
刑務所から様々な出所者たちを受入れて来たホーリーグラウンド教会。私が訪ねたその日、出所して間もない40歳の男性がいた。彼の名はヘクター。彼も厳しい信徒クラスをパスし、教会のルールに従いつつ教会の寮で暮らす温厚な会員だが、元殺人犯だ。
彼は20代の頃、大リーグのエンジェルズやディズニーランドで有名なアナハイム市でメキシコ系ギャングとして暴れていた。ある日、彼のGF(彼女)が敵対するギャングメンバーにレイプされ、頭にきた彼は相手の家に殴り込みレイプ犯を射殺した。普通なら逃走するが「アホだから」帰宅したところ、あっさり逮捕され地元オレンジ郡シェリフ本部にあるサンタアナ拘置所の巨大施設にぶち込まれた。ちなみに彼は“既婚者”だ。若さもあって本人いわく”絵に描いたようなアホ“な彼が考えることはただ一つ、「ここから出たい!」
拘置所の巨大施設内には大勢のギャングがいて皆 同じことを考えており、そのため“施設内の礼拝堂“で日曜に開催される礼拝はいつも満員盛況で、安易に出所を願う収監者たちが祈りを捧げる。「神さま!ここから出してくれ! そしたら何でも言うことを聞く!」などと。「ホンマにアホやった」と笑うヘクター。
不倫したあげく人殺しまでやっておいて「すぐに出所したい」などと いい加減で身勝手な祈りをしていた彼だが、礼拝の最中に突然、「ホンマに何でも わたしの言うことを聞くのか?!」という声を聞いたと言う。聖霊の声なのだろう。わけが分からずに当惑していると、続けて、「そこから出たければ己の罪を認めよ!」と次の言葉が。つまり罪状を認めろということ。なので彼はそうしようかと思った。「出たい」から。
「バカな!! 何をふざけたこと言ってんだ! お前は殺人犯なんだ。罪を認めたりなんかしたら、一生のあいだ出て来れんぞ!!」 担当弁護士は激怒した。周りの者たちも呆れ返った。減刑嘆願しないといけないのに容疑を認めるなどとは。ヘクターは悩んだ。「もし彼らの言うことが本当なら、俺は一生 塀の中かも知れない。。。」 しかし「神の声」は日増し大きくなっていく。要は神を信頼するか、人を信頼するかだ。そしてついに決めた。「神を信じ、罪を認めよう。どんな刑であっても。。。」 判決はもちろん「無期懲役」。ヘクターは神が示す道を選んだのだ。そこから信仰者としての壮絶な戦いが始まった。。。
「神の国とその義とをまず第一に求めなさい。
そうすれば、それに加えて、これらのものは全て与えられます。」
マタイの福音書6章33節
3-24-2022 つづく。。。
おかげさまで今日、結婚31周年を迎えました!
神さまとカミさんに感謝!
「足跡」
ある夜、一人の男は夢を見た。
彼は、神と共に、浜辺を歩いていた。
大空に、これまでの男の人生の一コマ一コマが映し出された。
どのシーンにも、砂の上に二組の足跡が残されていることに彼は気が付いた。
一つは彼の足跡、もう一つは神の足跡であった。
これまでの人生の最後の光景が映し出された時、
彼は振り返り、砂の上の足跡を見た。
彼はその中で、何度も足跡が一組だけしかないことに気付いた。
そしてそれは彼が人生の中で最も落ち込み、悲しみに満ちていた時であった。
そのことで彼は悩み、神に聞いた。
「神よ。かつて私があなたに従うと決心した時、
あなたは全生涯、私と共に歩んでくださると言われました。
それなのに、私の人生の最も苦しかった時に、
一組の足跡しかないことに気付きました。
あなたを最も必要としていた時に、
なぜ、あなたが私を見放されたのか分かりません。」
神は答えられた。
「わたしの最愛の子よ。わたしは、あなたを愛している。
わたしはあなたを決して捨てたりはしない。
あなたの試練の時、苦しみの時、足跡が一組しかなかったのは、
その時、わたしがあなたを背負って歩いたからだ。」
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