私は若い頃、もっと「今」を生きていた。 けれど今は、同じ風景を見ても、「いまここにある」ことよりも「もうすぐ失われる」ことに意識が向いてしまう。 それが歳を重ねるということなのだろうか。 「懐かしい」という言葉に、少し距離を感じるようになった。 それは甘い記憶だけではなく、「もうそこには帰れない」という現実を含んでいるから。 それでも、こうして静かに過ごせる朝があることが、何よりの贅沢なのだと思う。