アメリカ在住のため、日本語の本を全て電子書籍で購入している私は、もっぱら古い本ばかり読んでいます。なぜ?――安いからです(笑)。新刊本は1冊1500円超なんてざらですし、そもそもあまり電子化されていません。それで、わずか160円で何となく購入した『太宰治全集1』。太宰作品はいくつか読みましたが、この全集1のしょっぱなを飾る『人間失格』は、十代の頃、手に取り、「く、暗すぎる」とギブアップしたものでした。さて、あれから数十年経った今、どう思うかしらん――読んでみると、まるで渦巻きに吸い込まれるように没頭してしまいました。若い頃は「これを読み終わると、自分も死にたくなるのか」と、空恐ろしかったのかも...
この夜、青空文庫の項目で目にとまったのは、『雨の玉川心中』というタイトルでした。著者名に「太宰治 山崎富栄」という2人の連名。分野は「遺書」です。開いてみるとまぎれもなく短い遺書でした。『雨の玉川心中』https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/card58054.html「このあいだ、拝借しました着物、まだ水洗いもしてございませんの。おゆるし下さいまし」(遺書の中に富栄が記した言葉)山崎富栄は、太宰治とともに玉川上水に入水自殺をした太宰の愛人です(知り合った当時、2人とも既婚。ただし富栄の夫は結婚後すぐに出征し、そのまま戻らなかった)。一説に太宰は独占欲が強く...