このコラムは2004年作(掲載没…マイロソフトに遠慮?)
横丁の隠居:「八っあん、精が出るがそろそろ昼時、ちょいと休んだらどうかね」
八五郎: 「ご隠居、じゃあ昼飯にさせていただきやす。かかあの野郎がどじなもんで今日はコンビニの弁当なんでやすがねえ…。あれ!ご隠居もパソコンでやすか? あっしにゃあどうにも馴染めない代物でやんすが…」
隠居: 「便利になったもので、難しかったのは昔の事で今じゃあ家電なみ、箱から出してすぐに使える様になったねえ。そのうちコンピューターなんて名も無くなってそこいら中の物に組み込まれてしまって、知らず知らずのうちに使っている事になるだろうな。おまえさんの乗っている車にも八個位のコンピューター(マイクロプロセサー)が眼に見えない所で働いているよ」
八: 「なるほど、そんなもんでやんすかねえ…。所でご隠居、マイクロソフト屋のゲーツ旦那が独占だどうのと、お上のお調べを受けてなさるそうなんでやんすが、あっしにゃあさっぱり判らねえ…インタネットのブラウザがどうのこうのたって…」
隠居: 「まあ、商売というのは競争だから少しでも多く売りたいのは人情。競争があるから良いものが安く出回る訳だからな…。今、おまえさんの食べなされている弁当に例えてみよう。弁当に無くてならないものは何だね?」
八: 「そりゃあ勿論、オマンマで。メシがなくっちゃあ話にならねえ」
隠居: 「そうそう、まあ弁当屋がコンピューター機器の会社としてごらん。OS(オペレーテング・システム)というのはコンピューターの頭脳で、これがなくちゃあどうにもならない。つまり弁当ならオマンマだ。ゲーツの旦那は旨い飯の炊き方を考えなさって世界中のパソコンという弁当の十のうち九つに“ウインドウズ米”という飯を供給してなさるといっていい」
八: 「そりゃあすげえ! どうりで将軍様よりでけえお城に住める訳だ」
隠居: 「弁当は飯だけじゃあ足りない。オカズもいれば調味料もいる。色々な店が卸している訳でマイクロソフト屋じゃあ、そっちの方も大きく手をのばしている。流行のインタネットの世界に通じるにはブラウザという取次役がいるんだが、オマンマとオカズと…他に何がいるかね?」
八: 「えーと、刺身だって醤油がねえことにはしまらねえですが?」
隠居: 「さしずめブラウザは醤油と思ってごらん。おまえさんの弁当には、どうやってついてきているかね?」
八: 「へい、小さな袋入で…。これにゃあ他のソースもついてやす」
隠居: 「マイクロソフト屋では出遅れたが、自分のブランドのエクスプローラーという醤油を売りたい。所が弁当屋では、客の好みもあるからネットスケープ銘柄とか色々組み合わせて売りたい。そこでマイクロソフト屋では、だだで付けるから、うちの醤油を付けなければ飯を卸さないぞと…いったとか、言わなかったとか」
八: 「なるほど、それで御役人がこれはいかがなものであろうかと、言いなさる訳でやんすね」
隠居: 「お上では醤油を付けずに卸せ。…付けるのであれば他銘柄のものもつけよ。との仰せだ」
八: 「それでゲーツ旦那は、どうお答えになさってるんで?」
隠居: 「新米では飯に醤油をかけている。客の便宜を考えてしている事で、かけてしまった醤油が取り除けられるかと‥まあ、開き直りなさった」
八: 「先にかかってりゃあ手間は省けるが、客の好み通りという訳にゃあいきやせんね」
隠居: 「マイクロソフト屋以外の醤油袋を付けているのもあるのだが、袋が開けにくい上、お客に“本当にこれをかけるんですか?‥マイクロソフト印は同じか、もっとおいしいですよ”といった但し書きが開けようとする度に出てくる」
八: 「まあ、大して味が変わらなきゃあ手近な方を使いやすねえ‥やっぱり」
隠居: 「そこがマイクロソフト屋の狙いだな。将来は味が予めついた新種米を交配して売り出すと、いきまいていなさるが‥他の店が旨いもの作っても販路は無し…心配なのは皆が同じものしか食べなかったら旨いもまずいも、味が判らなくなる事じゃな」
八: 「成る程ねえ、それでご隠居もマイクロソフト屋の飯を食べなさってる訳で?」
隠居: 「いやいや、わしは此のシアトル長屋一番の偏屈者として通っておる。わしは米ならぬ林檎かじり(アップル・マッキントッシュ)じゃよ」
…おあとがよろしいようで…
“マイクロソフトの巻” 終
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