紳士淑女が働いていた、私の東急百貨店本店【閉店】
2月
2日
渋谷の東急百貨店本店が閉店したというニュース…寂しいですね。
実は私、学生の頃、ここのお菓子売り場でアルバイトをしていたのです。
まだ子供のような年齢の時から数々のアルバイトをしてきた私は、ここが他の場所と際立って異なることにすぐ気付きました。
百貨店の地下のお菓子売り場は時間によっては地獄のような忙しさになるのですが、そんな場合、これまで働いたあらゆるバイト先では上司が殺気立っていたりイラついていたりして、職場全体の雰囲気が悪くなっていました。でも東急ではどんなに忙しくても社員さんたちが「は~い!こちらですよ~!気を付けて持って行ってくださいね!」などと朗らかなのです。
私はここで気付かされました。誰もが殺気立って当たり前の時に、どんな態度を取れるか、そこに人としての真価が問われるんだと。編集業界も締め切りで殺気立ちますが、そういう時こそ朗らかであろうと心に決めたのを覚えています(できてますか~?自分)。
しかも社員の方々を観察していると、皆、庶民的に見えるものの、そこはかとなく気品が漂っています。
そんな場所に粗野な私が雇われたのは、ひょんなことからでした。1階に設置されるバレンタイン特設コーナーで働くチョコレートガールズ(販売スタッフ)のバイトに応募したのがきっかけです。しかし、書類審査で受かり面接に訪れたのですが、応募者が多く私の時間になっても順番が回ってきません。次に行く場所があるので1時間半待ったところで諦めることにしました。そこで図々しい私は社員さんに言いました。「私は面接は諦めます。ですが交通費を請求させてください。ここまで来るのに900円もかかったんです」。当時、私は本当に本当に、お金がなかったのです。
その結果、紳士な社員さんは900円の捻出に困ったというものあったのでしょう。私に言いました。「900円は出せないのですが、あなた合格です!」。
そこで、正式な面接で選ばれた才色兼備な(バイリンガルの美女までいた)その他のチョコレートガールズ4人と共に、このやさぐれた私がかわいい制服を着て華やかなバレンタインチョコを売ることになりました。
その後もなぜか縁あって、バレンタインが終わった後も地下のお菓子売り場でバイトを続けることになり、東急百貨店本店とは長い付き合いになりました。
東急百貨店本店は閉店になりましたが、あの素敵な方々はどこへ移動になっても、そこでもきっと温かいホスピタリティーを発揮され、幸せな空気を生み出しているはずです。