この砂漠の街で天災と言えば、日照りです。そのため有史以来、常に水不足対策が課題となっています。
ではもう一つの恐れるべき天災は? 実は洪水です。よってラスベガスではかつて、「渇きで死ぬか、溺れて死ぬか」と言われていました。
「砂漠で溺死」とは意外ですが、石のように固い土壌の上に激しい雨が降れば、水はほぼ沁み込むことなく地表に溜まっていきます。実際この乾いた砂漠では、1960年以降、35人もの方が洪水で亡くなっています。
3年前に引っ越してきた頃、町営放送のスピーカーから聞こえてきたのは、洪水になったらどのように避難すべきかという注意喚起でした。その時は「洪水?私の聞き間違いかな」と思ったのですが、家の周囲を歩くにつれ、この街の並々ならぬ対策が見えてきました。
まず家の裏にあるのは、巨大なダム――緊急貯水用で、水は一滴も入っていません。このダムの手前にはこれまた広大な運河(荒川ぐらいの幅)も造られています。そしてこちらも一滴も水は入っていません。
あまりの巨大・広大さに「ここに水が溜まる日なんて来るのかな?」と思うほどですが、実際に起こり得るから造られているのでしょう。
●このサイトからはラスベガス中に張り巡らされた、“水のない貯水池、運河”を見ることができます。
https://gustfront.ccrfcd.org/vsjs/vs.html
※地図上の青線が工事の完了した水路です
●ラスベガスにお住まいでしたら、このサイトから自宅が洪水の高リスクエリアか確認することができます。
https://www.regionalflood.org/programs-services/flood-zone
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猪股るー:広告&翻訳代理店「Ru Communications有限会社」代表。広告代理店のコピーライターを経て、『るるぶ』『三都物語』などの編集者、女性向け情報誌『アヴァンティ』副編集長に。著書に日本植民地時代を生きた台湾のお年寄りを取材した『愛する日本の孫たちへ』(桜の花出版)、韓国で発売された日本語教材『チョロムンイルボノロマルハジャ(今時の日本語で話そう)』(サラミン出版)などがある。現在はアメリカ在住。
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