第2回・世界腹話術の祭典「国際的交流フェスティバル」
2002年11月22日~24日
主催者リポート 池田 武志
2001年11月、日本初の“世界腹話術の祭典”開催に引き続き、咋年11月、“第2回目の開催”が実現したことについて、正直に言って私は本当に奇跡の感を深くしています。一昨年も同じような思いをしたのですが、私はこの事実をどう受け止めたら良いか? 不思議で仕方ありませんでした。
私は妻の周と共に、1998年7月ラスベガスのインペリア・パレスホテル&カジノで行われた国際的腹話術師協会(代表バレンタイン・ボックス氏)主催の「ヴェガスコンベンション」に参加しました。そのときの感動は今も私の脳裏を離れません。「いつの日かこの感動を日本の仲間たちにも伝えたい!」と思い続けて、やっと実現したのが、“第1回・世界腹話術の祭典”「国際交流フェスティバル」でした。
何もかもが初体験の出来事でした。“海外から腹話術師を日本に呼んで、果たして彼らは来てくれるだろうか? “国内のメンバーは、果たして参加してくれるだろうか?” “資金立替に我が家の家計は耐えられるだろうか? ” 不安は募り、当初の決意もくじけそうになりました。しかし「あの感動を仲間たちと分かち合い、世界一流のパフォーマーたちの芸を紹介したい!」との思いが勝って実行に移しました。
『武志の為に都合をつけて行くよ』と言ってくれたのはあのバディ・ビッグマウンティン氏でした。『私も行くつもりだよ』と言ってくれたのはカナダのデニス・チャンとドイツ人のDr.ステーボ。そしてリチャード・ポール氏もエルビスことケリー・サマーズ夫妻も、又ドクター・カロン夫妻も参加を引き受けてくれました。妻の要望でランデル・マッギー氏も約束してくれました。何と心優しい方々でしょう。
しかし開催2ヶ月前の9月11日、あのニューヨークでの世界貿易センターテロ事件が発生。“これで全てが振り出しに戻ってしまうのだろうか? ” 不安は募るばかりで心不全の毎日が続きました。参加者募集も既に始めており、今さら引き返すことは出来ません。“万事を尽くして天命を待つ” の心境で中止を思いとどまりました。そして結果は大成功でした。たくさんの協力者とたくさんの参加者と、そしてたくさんのショーを披露していただき、又多くの方に観賞していただく事ができました。
2002年11月22日(金)は朝から大忙し。空港へ出迎えに向かう人。荷物を運んでくれる人。会場手続きを済ませてセンター棟での受け入れ準備の私。各パートがすべてが急ピッチで進みました。
午後一番手に到着したのは、イギリスからのウェンディ・モーガンさんとインドからのラムダス・パディさん親子。そして前日から私のところへ来ているカナダのデニス・チャンさんと、原教授の所へ来日していたドクター・カロン夫妻も到着。最後はアメリカから恐竜のグロークと共にランデル・マッギーさんが到着。ビッグマウンティン夫妻は翌日の
到着予定ですので、これで今日のメンバーは通訳者を待つばかりとなりました。
そこはまさに国際的な雰囲気でした。海外参加者全員にリバーシブルのフリースジャケットを土橋氏と相談の上でプレゼントしました。そして素敵な食事を楽しみながら、誰もが明日から開催のフェスティバルに興奮していました。
フェスティバルは、翌日23日(土)から始まりました。早朝から会場設営、受付などの準備が始まりました。しかし今年は2回目開催とあって、プロの照明・音響・舞台進行スタッフも何となく慣れた手つき。国際会議場は初めての場所でしたが、それぞれの持ち場でテキパキと働く東京チャターズメンバーも、頼もしい限りでした。
午前10時半からプレゼンテーションの開始。引き続きバレンタイン・ボック氏からのビデオメッセージ。昼食をはさんで午後は “ 腹話術と教育 ” のテーマでのワークショップ。コーディネーターは元警視庁婦人警察官で健ちゃん愛好者友の会の飯室真奈美さん。そして栄養教育と腹話術の活用法を浜谷正美栄養士。学校教育と腹話術の活用法は元小学校校長の青木靖氏。飯室さんの交通安全教育や社会教育としての腹話術は日本の伝統的活用法。誰しも子供の頃に見た経験があります。
続いてウェンディ・モーガンさんの腹話術人形操作と唇管理術のワークショップ。ウェンディさんのリップコントロールには定評があります。またマニピュレーションも最高の技術を持っておられます。その技術を是非日本のメンバーに手ほどきして欲しくて、今回の招聘メンバーに加えさせていただきました。
午後3時半からは参加者お待ち兼ねのオープンマイクのコーナー。全国から集ったプロアマの腹話術師たちが日ごろの腕を披露してくれました。アメリカからの講師の一人Dr.カロンさんは、日本の腹話術師たちの技術とオリジナリティについてとても高い評価をしておりました。
夕食をはさんで午後6時、川上のぼる協会名誉会長のオフィシャル・オープニング宣言で 第2回・世界腹話術の祭典「国際交流フェスティバル」が正式に始まりました。
まずは、国際シンポジューム“メンタルヘルスケアーと腹話術”のテーマのもと、群馬大学の教授で小児神経科専門医のDr.原先生のコーディネートによって開催されました。原博士は、発達が遅れている人や、また自閉症の人々との「意思の疎通を容易にするために活用している“腹話術の研究論文”」もまとめていらっしゃいます。
ゲストの一人は、昨年第1回目参加のドクター・カロン先生。児童催眠療法で腹話術を使った3つのケーススタディーについて通訳を交えて話していただきました。予定されていたもう一人のドクターは、池田周理事の友人で虎ノ門病院小児科医師の芥直子女史でしたが、急患の為出席できませんでした。このセミナーでもう一人の注目すべきゲストは、イギリス人の腹話術師で臨床心理士のウェンディ・モーガン女史でした。彼女は長期入院児童のメンタルケアーのためにも働いていらっしゃいます。
櫻井陽子女史(中学校教諭)は、障害児学級での“腹話術を活用したコミュニケーション”の素晴らしい報告などを講義して下さいました。そして、鹿庭悦子協会副理事長は、障害児やカウンセリングの為の腹話術、および人形を取り扱う方法論を講義してくれました。出席した人たちは今回のセミナーを身近な問題として真剣にかつ楽しく受講しました。
初日の最後は、日本国内初の“国際パネルディスカッション”を持ちました。コーディネーターは昨年も参加のランデル・マッギー氏。出席者は舞台向かって左から川上のぼる協会名誉会長。デニス・チャンカナダ人腹話術師。ラムダス・パディインド人腹話術師。福大介協会名誉顧問。そしてバディ・ビッグマウンティン米国インディアン腹話術師の総勢6人の大物腹話術師たちが一堂に会しました。そして質問を交えての様々なプレゼンテーションとなりました。
翌日は開場をカルチャー棟の大ホールに移しての記念撮影から始まりました。参加者それぞれの相棒を連れての記念撮影は “それ自体が特別イベント” となり、客席はまさに国際交流の場と化しました。記念撮影に先立って客席の一角では、NPO法人組織としての 「第1回通常総会」を開催いたしました。参加者は個人会員及び団体加盟代表者計60名。
11時からは2回目のオープンマイク。加盟グループを代表しての出演者や団体での出演パフォーマンスなど色とりどりでにぎわいました。
昼食をはさんで午後1時からは、私が個人的にお願いして実現したバディ・ビッグマウンティン氏のワークショップでした。題して“ディスタンスボイスの創り方と演じ方”。
わずか5年の付き合いですが、私は彼の技と人間性に惚れ込んでいる一人です。腹話術師に必要な全てを兼ね備えている彼に、是非講義してもらいたかったのがこの“ディスタンスボイス”についてでした。
今日では腹話術と言えば「人形にしゃべらせること」と捉えられがちですが、三千年の昔からほんの数百年前まで、腹話術の主流をなしてきたのがこのディスタントボイスです。完璧にマスターして自分のパフォーマンスに活用している世界の腹話術師の中でも、数少ない一人です。今回の祭典に参加した誰もが、最も喜んだワークショップでした。
さて一般の観客も交えた国際ファミリーショーの開幕です。トップに演じたのはインドからのラムダス・パディ親子。世界中で6000回以上のショーを実行して来た彼ら。そのユニークなパフォーマンスに盛んな拍手。続いては昨年も参加して客席を大いに沸かせた吉本興業所属ただ一人の腹話術師、川上じゅん氏の魅力的なソフトパペットは大好評でした。
そして前日貴重なセミナーを行ってくれたドクター・カロン先生にもショー出演をお願いしました。氏は『私は多くの人々の前で演じることが少し心配でした。何故かと言えば、私は今回の出演者の中で最小の舞台経験者でしたから』と言っておられました。
400人以上の観客が観賞する中で最後の出演者はランデル・マッギー氏でした。ランデル氏は、アメリカ合衆国で子どもの為のショーを専門にしています。腹話術の他に彼は、ストーリィ・テラーであり、紙切り師です。彼は今年も又日本語でパフォーマンスをしてくれました。観客は全てのプログラムに大変満足してくれました。
夕食後の国際ガラショー(ガラとは壮大な祭りのことです)は、川上のぼる氏、ウェンディ・モーガン女史、福大介氏と小介氏親子、及びバディ&バッファロー・ビッグマウンテン兄弟によるパフォーマンスでした。今回のショーもまた最高でした。
開演に先立ち、NPO法人日本腹話術師協会から川上のぼる氏に、“腹話術人生55周年”を称えるブロンズ像が贈呈されました。プレゼンターは協会名誉顧問福大介氏。
戦後まもなくの荒廃した世の中にあって、川上氏は腹話術によって人々の日常生活に笑いと活気をもたらせて下さいました。日本の腹話術師たちがあのエドガー・バーゲン氏の映画によって腹話術に取り組んだごとく、“川上先生の影響によって腹話術を始めた方”は数知れません。長年のキャリアと洗練された技術は、誰をも寄せ付けない日本のマイスター腹話術師です。
続いてのパフォーマーはイギリス人の女性腹話術師ウェンディ・モーガン女史。様々なキャラクターボイスを共演パペットと共に披露し客席を魅了しました。彼女のパフォーマンスは全ての参加者にたくさんの楽しみとアイディアを提供しました。
続く福大介氏は、舞台を彩るイルミネーションに気を取られている観客の意表をつき、客席の後ろから登場。そして誰も真似の出来ないユニークな「ロボット腹話術人形の修理に取り掛かる」といった設定。途中からは息子の小介氏が加わってのローラー・ダンスと演技に開場は大拍手。
ラストを飾るのはビッグマウンティン兄弟。彼らのショーを視覚的に盛り上げる為に、私は今回もスモークを用意しました。彼の末弟のバッファロー氏は日本に住んでいて、彼の奥さんは空軍パイロットです。
この兄弟によるパフォーマンスは昨年に引き続き大きな感動を与えてくれました。生の舞台によってこれほどの喜びと勇気を与えてくれた事に、心からの賛辞を送ります。
国際ガラショーの終了後には、お別れパーティを持ちました。そして、多くの関係者が参加してくれました。参加者は感動覚めやらぬ会合で、今回のフェスティバルについて大いに話し合い、喜び合うことが出来ました。
私は、このような素晴らしいフェスティバルの開催ができたことを心から喜ぶと共に、今回の祭典のために、私の手となり足となり手伝ってくれた仲間たちに心から感謝致します。何の利害も報酬もなく、ただひたすら参加者に喜んでもらうことを大前提に彼らは活動してくれました。
また、たくさんの方々から祝辞と共に賛助をいただきました。お蔭様で大きな赤字を出すこともなく大成功に終えることが出来まして本当に喜んでおります。
関係者の皆様ありがとうございました。紙面をお借りして心からの御礼を申し上げます。
2003年2月 NPO法人日本腹話術師協会代表 池田 武志