BCA土曜学校のコラムVol. 100〜「葉書」〜
中髙国語2の二学期最後の授業は、向田邦子さんの「字のない葉書」の学習でした。
まだ字の書けない妹が疎開する時、父が自分への宛名を書いて持たせた葉書が「字のない葉書」。
父親の存在の確かさと家族の心のつながりが書かれた随筆は、距離が離れた時に普段見えなかった姿を伝える「言葉」についても考えさせてくれます。
日本では今、年賀葉書を書く時節です。
メールでの一斉送信も増えていますが、年賀葉書のやりとりは、年始のあいさつとしてずっと大事にされてきました。
お世話になっている身近な方やご無沙汰している方に年賀状を書く時間は、自分にとって大切な人とのつながりを想ったり、自分自身の一年を振り返る時間でもあります。お正月に葉書が届いた時、特に手書きで添えられた言葉にあたたかさを感じます。
「はがき」は、覚え書きの「端書き」が語源で、郵便制度が導入された明治以降、郵便葉書をさすようになり、漢字の「葉書」が用いられるようになりました。
「葉書」は、文字の通り「葉に書く」。
この文字を書く葉は、「多羅葉(たらよう)」という樹木の葉で、平安時代に相手に伝えたいことを葉に書いて渡したことが始まりだと言われています。
多羅葉の葉は、葉の裏に傷をつけると組織が破壊されて、その部分がすぐに黒くなり文字が浮かびあがり、そのまま消えずに残るので言葉を保存する葉として用いられたのだそうです。
伝えたい人に伝えたい言葉を、葉に小枝で書い手渡していた行いが、今は葉が紙に変わって、手渡しが遠く離れた人へも言葉を届ける「葉書」となったという話がとても素敵なことに思えて、授業の中で生徒さんに話をしました。
思いを伝える道具として、形を変えながら使い続けられていることが胸に響きます。
相手に自分の思いを伝えるために、さまざまな方法を考えてきた先人達。
これからの通信手段はどのように変化し、未来につながるのでしょうか。昔は紙の「葉書」が使われていたのだよと語られる日も来ることでしょう。
でも、どのような形に変わっても、「言葉」がこれからもずっとずっと使われ続けることは確かなことです。
BCA土曜学校の皆さんには、「言葉」が人間だけに与えられた意味をもう一度確認して、日常生活でまた、それぞれの自己実現に向けてさらに社会を切り拓いていくために、上手にそして豊かに言葉とかかわっていって欲しいと思います。
児童生徒の皆さんの学校での様子と、言葉をつないてきた言霊ちゃんブログも今回で100号、きりのよい今回をもって終了となります。
つたないブログを読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
2020年もまもなく終了です。
どうぞ、よい年をお迎えください。
来年が希望に満ちた明るい年になることを祈念して筆をおきます。