● BCA土曜学校のコラムVol.79●
読書のすすめ2
今日は、小学部の皆さんへのおすすめ本紹介です。
「青空文庫」には、教科書に載っている「やまなし」の作者宮澤賢治、「ごんぎつね」の作者新美南吉の作品がたくさん入っています。
https://www.aozora.gr.jp/
低学年の皆さんはお家の方に読んでもらい、耳で聞いて想像する世界を楽しんでもらえたらと思います。私は、幼いころに聞いた祖母の昔がたりが今でも頭に残っています。
一人目の宮澤賢治は、岩手県花巻に生まれ花巻農学校の先生として、また農民の生活向上を目指して活躍しました。無理がたたり37歳の若さでこの世を去りましたが、心に響く多くの童話や詩を残しています。理想郷「イーハトーブ」という言葉でも有名です。
「雨ニモマケズ」を改めて読んでみました。
「風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテヰル 一日ニ玄米四合ト 味噌ト少シノ野菜ヲタベ アラユルコトヲ ジブンヲカンジョウニ入レズニ ヨクミキキシワカリ ソシテワスレズ・・・」
このような状況の中で読むと、今までとは違った思いが募ってきます。
二人目の新実南吉は、愛知県半田市で生まれました。雑誌『赤い鳥』の作家として有名です。結核を患い29歳で亡くなりました。小さいころから童話を書き、先生をしていた時は子ども達に語って聞かせたそうです。作品はあまり多くありませんが、作品からあたたかさが伝わってきます。
二人の作品から、それぞれ五作品とその書き出しを紹介します。
宮澤賢治
1、「よだかの星」
よだかは、実にみにくい鳥です。顔は、ところどころ、味噌《みそ》をつけたようにまだらで、くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。足は、まるでよぼよぼで、一間《いっけん》とも歩けません。ほかの鳥は、もう、よだかの顔を見ただけでも、いやになってしまうという工合《ぐあい》でした。
2、「注文の多い料理店」
二人の若い紳士が、すつかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊《しろくま》のやうな犬を二|疋《ひき》つれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云《い》ひながら、あるいてをりました。
「ぜんたい、ここらの山は怪《け》しからんね。鳥も獣も一疋も居やがらん。なんでも構はないから、早くタンタアーンと、やつて見たいもんだなあ。」
3、「セロ弾きのゴーシュ」
ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りでした。けれどもあんまり上手でないという評判でした。上手でないどころではなく実は仲間の楽手のなかではいちばん下手でしたから、いつでも楽長にいじめられるのでした。ひるすぎみんなは楽屋に円くならんで今度の町の音楽会へ出す第六|交響曲《こうきょうきょく》の練習をしていました。
4、「銀河鉄道の夜」
「ではみなさんは、そういうふうに川だと言《い》われたり、乳《ちち》の流《なが》れたあとだと言《い》われたりしていた、このぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知《しょうち》ですか」先生は、黒板《こくばん》につるした大きな黒い星座《せいざ》の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯《ぎんがたい》のようなところを指《さ》しながら、みんなに問《と》いをかけました。
5、「風の又三郎」
どっどどどどうど どどうど どどう、ああまいざくろも吹きとばせ すっぱいざくろもふきとばせ どっどどどどうど どどうど どどう
谷川の岸に小さな四角な学校がありました。学校といっても入口とあとはガラス窓の三つついた教室がひとつあるきりでほかには溜《たま》りも教員室もなく運動場はテニスコートのくらいでした。
新実南吉
1、「手袋を買いに」」
寒い冬が北方から、狐《きつね》の親子の棲《す》んでいる森へもやって来ました。
或朝《あるあさ》洞穴《ほらあな》から子供の狐が出ようとしましたが、「あっ」と叫んで眼《め》を抑《おさ》えながら母さん狐のところへころげて来ました。
「母ちゃん、眼に何か刺さった、ぬいて頂戴《ちょうだい》早く早く」と言いました。
2、「赤い蝋燭」
山から里の方へ遊びにいった猿《さる》が一本の赤い蝋燭《ろうそく》を拾いました。赤い蝋燭は沢山《たくさん》あるものではありません。それで猿は赤い蝋燭を花火だと思い込んでしまいました。猿は拾った赤い蝋燭を大事に山へ持って帰りました。 山では大へんな騒《さわぎ》になりました。
3、「飴だま」
春のあたたかい日のこと、わたし舟《ぶね》にふたりの小さな子どもをつれた女の旅人《たびびと》がのりました。 舟《ふね》が出ようとすると、「おオい、ちょっとまってくれ。」と、どての向こうから手をふりながら、さむらいがひとり走ってきて、舟にとびこみました。 舟《ふね》は出ました。
4、「おじいさんのランプ」
かくれんぼで、倉の隅《すみ》にもぐりこんだ東一《とういち》君がランプを持って出て来た。それは珍らしい形のランプであった。八十|糎《センチ》ぐらいの太い竹の筒《つつ》が台になっていて、その上にちょっぴり火のともる部分がくっついている、そしてほやは、細いガラスの筒であった。はじめて見るものにはランプとは思えないほどだった。そこでみんなは、昔の鉄砲とまちがえてしまった。
5、「花のき村と盗人たち」
むかし、花《はな》のき村《むら》に、五|人組《にんぐみ》の盗人《ぬすびと》がやって来《き》ました。それは、若竹《わかたけ》が、あちこちの空《そら》に、かぼそく、ういういしい緑色《みどりいろ》の芽《め》をのばしている初夏《しょか》のひるで、松林《まつばやし》では松蝉《まつぜみ》が、ジイジイジイイと鳴《な》いていました。
読んでみたいなと思った作品に出会えたら嬉しいです。
ずっとお家で過ごしている皆さんの時間が、少しでも豊かなものになるよう願っています。