BCA土曜学校のコラムVol.68 〜 マタギ〜
BCA2で行われたシアトル熱中オープンハウスで、奥会津の「マタギ」猪俣昭夫さんの講演がありました。
「マタギ」とは、東北地方・北海道から北関東・甲信越地方にかけての山岳地帯で熊やシカなどの獲物を獲ることを生業とする猟師のことです。
「マタギ」の語源は、
①アイヌ語の「マタンギ」「マタンギトノ」が訛ったという説。
②山をまたいで歩く「マタグ」からきたという説。
③「マタハギ」お釈迦様が木の下で瞑想し悟りをひらいた木「もあだ」からとれる強い繊 維を身に着けていたという説。
⑤山に住む鬼よりも強いという意味で「又鬼」からきたという説。
など様々あります。
猪俣氏は、奥会津で自然との共生を考えている「マタギ」です。
食べ物だけでなく、空気や川のせせらぎや鳥のさえずり、草の匂い等々
五感で感じるもの全てを栄養として「命」と向き合ってこられた本物のマタギからのメッセージにはずっしりとした重みがありました。
「熊はすごい能力を持っている。」と語る声からは、
熊の生態を熟知し、熊を敬愛していることが伝わってきました。
「熊と対峙する時は、自分の命を見、自分の命を感じる。」
「自分の強さや弱さ、限界を感じることができる。」
「自然は、熊とミツバチが保っている。そして、マタギが熊を打って熊を生かしている。」
「狼が絶滅し自然の生態系が変わった。マタギは狼のかわりをしているのだ。」
「獲物の命をとることで、全ての命が自然に生かされていることを知らされる。」
これらは、自分の生き方に誇りを持っておられる言葉でした。
「人間は皆、強さを持っているのに、あきらめて強さを出さずに生きている人が多い。」
自然に接する機会がない人ほど、心があらぶっているという現代人への指摘も頷けるものでした。
「マタギ」という職業を通して自然に触れてきた本物から伝えられる言葉には説得力があり、心に響きます。
人間のために自然を利用する時代はもう終わりにしなければなりません。地球には多くの生物存在しています。それらすべての存在に意味があり人間も自然の一部として生かされていること。命の重みと、動植物とともによりよく共存することの大切さを考えさせられた時間でした。