朗読詩:マリアは なぜ 泣いているのか
ひとしずく……
朝露のように
白いヴェールを 静かに濡らす
それは──
遠い 誰かの
かすかな祈りの 名残かもしれない
あるいは──
砕けた愛の
名もなき叫びかもしれない
抱きしめた 御子の記憶と
幾千の“わたし”を 重ねながら
マリアは 今日も 黙って立つ
裁かず
問わず
ただ 見つめる
そして──
こうささやく
「あなたの痛みを
わたしは 知っています」
その声に 空はほどけ
風はやわらかく 頬をなでる
ひとしずくの涙のなかに
希望が 灯っている
あなたのために
世界のために──
今日もまた マリアは 静かに泣いている