デイサービスの「お泊り」について朝日新聞が鋭い批判記事
1月
13日
朝日新聞が、1月13日付で、この通称「お泊りデイ」と呼ばれる介護保険外の企業による独自サービスの闇を報道している。
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表通りの年越しそばの店に家族連れが並ぶ大みそかの夜、そこはひっそりとシャッターが閉じられていた。東京都世田谷区の住宅街。路地の奥の戸建て住宅を改装した施設に、この夜も3人が泊まった。
通称「お泊まりデイ」と言われる。昼に自宅から通うデイサービスの事業所なのに、泊まり続ける老人がいる。デイサービスの利用は10人ほどだが、6、7人が宿泊の常連だ。
ふだんは階段の上り下りができる2人は2階の6畳で、車椅子が必要な人は1階の8畳ほどの部屋にベッドを四つ入れて雑魚寝のように寝る。ベッドの間には衣類など生活用品を入れた紙袋が積まれ、ポータブル型のトイレが置いてある。
夜勤の職員は1人。夜は汚物の処理をしないため、朝は臭いがむっと鼻をつく。老人たちは狭い部屋に詰め込まれ、一晩800円の宿泊料を払う。
シズさん(92)は昨年末に来た。夫が亡くなった後、アパートで一人暮らしをしていたが、認知症が進み家で転んだ。病院が経営する老人保健施設に入っていたが、3カ月しか入れてもらえなかった。
「特別養護老人ホームは入所待ち。有料老人ホームも見たが、とても高くて」。親族はため息をつく。
デイサービスで通っていたキヨコさん(96)はいつしか長期連泊になった。自らトイレに行けず、食事も職員の介助で食べるが、硬いものは食べられない。泊まる人では唯一、長男が薬を持って面会に来る。そのたび「帰りたい」と訴える。
一番若いフミコさん(65)はここでの生活が2年以上になる。食事やテレビを見る時以外はほとんど寝ている。脳梗塞(こうそく)の後遺症もあって物忘れがひどく、5分に1回は不安そうに聞く。「自分はどうなるの」
有料老人ホームは介護保険で介護費用の9割が賄われるため、国が部屋の広さやトイレなどの設備の基準を設けている。だが、お泊まりデイは保険の枠外のため国の基準もなく、老人がまともな介護を受けられない「劣悪介護」の温床だ。
「どこにも受け入れてもらえない老人がいるし、家族の負担も重い。現実は社会保障制度のはざまにいる人が多数派だ」。デイサービス大手「茶話本舗(さわほんぽ)」を運営する日本介護福祉グループ(本社・東京)の藤田英明会長は言い切る。お泊まりデイを売りに、創業7年ほどで加盟店を全国745事業所に広げた。世田谷区の事業所もその一つだ。
「劣悪な環境」との批判には、宿泊の受け入れ人数や日数を抑える自主ルールを作り、健全化に取り組んでいるという。それでも1割は未達成だ。
団塊世代がリタイアし、東京、大阪、福岡など都市部を中心に高齢化が進む。2025年には65歳以上の人が3割を超える。その老後には大きな不安が待つ。