もの言う牧師のエッセー 傑作選
もの言う牧師のエッセー 傑作選
第313「 なんで僕を嫌いなのか?」
第313「 なんで僕を嫌いなのか?」
10月末のフロリダは暑かった。「アメリカは白人だけのものだ!」。過激な発言で知られる白人至上主義右翼団体の指導者リチャード・スペンサー氏が米フロリダ大学で演説することになり、リック・スコット州知事は前日に州非常事態宣言を発令した。スペンサー氏は2ヶ月前、トーチを掲げる数百人の白人右翼主義者を率いてバージニア大学で演説したことがあり、その際には500人の警官が出動し屋上には狙撃兵が配置される騒ぎとなった。
「ナチスのクソ野郎、出て行け!」 案の定、大学周辺各所で小競り合いが頻発し両陣営が激しく罵りあう中、誇らしげにナチスのカギ十字のTシャツを着て白人至上主義を主張していたランディ・ファーニスさんは顔面にパンチを喰らった。と、その時、黒人男性アーロン・コートニーさんが近寄りファーニスさんの目の前に立って問いかけた。「なんで僕のことが嫌いなんだ?」
その質問を無視するファーニスさんに対しコートニーさんは驚くべき行動に出る。何と大きく両手を広げファーニスさんを抱きしめた!これにはファーニスさんもビックリ。当惑しつつなおも抵抗する彼に対しコートニーさんは何度もハグを繰り返し、ついにファーニスさんもコートニーさんを抱きしめ返したのだ。
そしてコートニーさんは再び「なんで僕のことが嫌いなんだ?」と質問したところ、ファーニスさんはついに「分からない。。。」とポツリ。「彼を殴ることも出来た。傷つけることも出来た。でも神が私の心に囁いたのです。彼が必要なのは愛なのだと」とコートニーさんはニューヨーク・デイリー・ニュースに語っている。
知事による警報を聞いた時、「このままでいけない。このままではますます人々の間に隔たりが出来てしまう。何かしなければ」と駆けつけた。「たった一度のハグで世界を変えることが出来ます」。 イエスは言う。
「『目には目で、歯には歯で。』と言われたのを、あなたがたは聞いています。
しかし、わたしはあなたがたに言います。悪い者に手向かってはいけません。
あなたの右の頬を打つような者には、左の頬も向けなさい。」
マタイの福音書5章38-39節。
マタイの福音書5章38-39節。
十字架にかかったイエスは、罪にまみれ良く理由も分からぬ憎悪に取り付かれている敵に対し、自身が持つ神の力で撃滅したりはしなかった。ゴスペルとはよくある根拠無き平和主義や無抵抗主義の類とは全く違う。戦うことである。愛の力で。
2017-12-9
2017-12-9