もの言う牧師のエッセー 再投稿
第290話「 世界総統への道 」
トランプ米大統領は5月22日、米国の現職大統領として初めて、エルサレム旧市街にあるユダヤ教の聖地「嘆きの壁」を訪問した。彼は昨年の選挙中から「エルサレムをイスラエルの首都として認め、米大使館をテルアビブからエルサレムに移す」と言ってはばからないが、日米をはじめ国際社会はエルサレムをイスラエルの首都とは認めていない。国際社会の大半は旧市街のある東エルサレムが将来のパレスチナ国家の首都になると考えており、ゆえにトランプ氏の今回のイスラエル訪問をアラブ諸国及び世界が注視した。
いっぽう、彼の訪問を翌日に控えた21日、イスラエルのネタニヤフ首相は「エルサレムはこれからも常にイスラエルの首都だ」と宣言し大いに気勢を上げた。トランプ氏のいつもの大風呂敷のおかげでにわかに脚光を浴びたエルサレム帰属問題ではあるが、実は米国がエルサレムへの大使館移転を口にするのは珍しいことではない。クリントン、ブッシュ各氏も大統領就任前は移転を支持、それどころか米議会は95年には「エルサレム大使館法」を成立させた。
が、前述のとおりパレスチナなどの反発を考慮し、歴代大統領は6カ月ごとに執行を“棚上げ”して今日に至る。要するに今回の一件で米国がいかにイスラエルとエルサレムに興味を持っているかが露呈した。「中東和平実現に向け、またとない機会が目の前にある」などと述べ、暗礁に乗り上げている和平交渉再開に向け仲介役への意欲をむき出しにするトランプ氏を見て、イエスが語った世界の終末預言と、世界統一政府の上に君臨する世界総統に関する預言、
「『荒らす憎むべき者』が、聖なる所に立つのを見たならば、(読者はよく読み取るように。)」
マタイの福音書24章15節、
を思い出しゾーッとした。聖書によれば、世の終わりには政治的問題やネットワークの構築によってグローバル世界が加速し、やがてその上に君臨する超独裁者が現れ、“聖なる所”であるエルサレム神殿の中で執務をすることが描かれているが、そのためにはまず中東和平を実現せねばらない。なぜエルサレムなのかこれまで日本人にはピンと来なかったが、今回の一件で欧米が目指すものには斯様な聖書的背景があることが伺えよう。
さらにはトランプ氏の娘婿であるクシュナー氏はホロコースト生き残りの祖父母を持つバリバリの正統派ユダヤ教徒であり、今や大統領特別顧問にまでのし上がったが、今回の「嘆きの壁」訪問にはイスラエル政府当局者が同行しない中、彼がユダヤ教指導者のラビノビッチ師のみをともないトランプ氏に付き添っているのが印象的だ。
そして今、第三神殿建設がささやかれている。欧米エスタブリッシュメント、在米ユダヤ人たち、そしてイスラエルの人々、様々な思惑が交錯しながら事態ははゆっくりと世界統一政府への道を進んでいく。しかし誰がエルサレム神殿の中に立とうともそれはキリストのゴスペルとは無関係である。独裁者は滅び、再建された神殿は灰燼に帰す。その時こそ、本当の王であるキリストが再来されるのだ。 2017-7-1