言う牧師のエッセー 再投稿
第276話「 置かれた場所で咲きなさい」
昨年の暮れ、ロングセラー「置かれた場所で咲きなさい 」の著者であるノートルダム清心学園理事⻑、渡辺和子さんが亡くなった。1936年の冬、彼⼥が9歳の時、陸軍将校らによるクーデター未遂「2・26事件」 が発生。当時陸軍⼤将で教育総監だった父、渡辺錠太郎が襲撃され、渡辺さんから僅か1メートルほどしか離れていない場所で43発の銃弾を浴びて命を落とした。2014年夏の毎日新聞のインタビューで渡辺さんは、「父を襲った兵士を赦せるまで50年かかった。」と告白している。
「どうしても咲けない時もあります。雨風が強い時、日照り続きで咲けない日、そんな時には無理に咲かなくてもいい。その代わりに、根を下へ下へと降ろして、根を張るのです。次に咲く花が、より⼤きく、美しいものとなるために」と前述の著書で語っているが、正に至言である。とは言え、“置かれた場所で咲く”のは相当難しい。根を下に降ろす間もなく倒れてしまう人も多い。しかしイエスを信じる彼⼥の意味するところは、
「主に信頼し、主を頼みとする者に祝福があるように。
その人は、水のほとりに植わった木のように、
流れのほとりに根を伸ばし、暑さが来ても暑さを知らず、
葉は茂って、日照りの年にも心配なく、
いつまでも実をみのらせる。」
エレミヤ書17章7-8節、
と神が聖書を通して告げるように、イエスを信頼することから発生する⼒ではなかろうか。それは世で言う積極思考や、あてもなく我慢し続けることとは全く違う。根を伸ばしていく過程とは、もっと掘り下げてイエスに近づき、イエスの⼒で困難に⽴ち向かうことと言って良い。
彼⼥はまた、「人間の間に争いはなくならない。敵ではなく自分と戦うことなしには平和はもたらされないと思います。相手の言い分をちゃんと聞く、こちらの言い分はちゃんと言う。何が正しいかを語り合う。」ともインタビューで語っているが、困難から目をそらさず、まっすぐに向き合い、戦い続け、やがてイエスの⼒で⼤輪の花を咲かせる真の信仰者の道を、渡辺和子さんの生き様に垣間⾒た。
2016-2-24