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もの言う牧師のエッセー 再投稿 

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もの言う牧師のエッセー 再投稿 
第231話「 ジョーの明日 」
 
  当時、日本最短記録の8戦目で世界王座を獲得、その後も3度の戴冠を果たし、一時は網膜剥離により引退を勧告されたものの劇的KOで復活を成し遂げ、今なお現役ボクサーとして生き続ける辰吉丈一郎。原則的に37歳とされる日本人ボクサーの定年をすぎて45歳になった“浪速のジョー”の日常を20年にわたり追いかけたドキュメンタリー映画「ジョーの明日」が公開された。彼はなぜ辞めないのか?


「僕にとっては、ボクシングが生活の一部なんです。」と答えた彼。「みんなも朝起きると歯を磨くでしょ?それがボクサーだから “走る“ が生活の一部で毎日走る。階級ごとに体重制限があって太ってはダメだから、一日1食を続けてるのもそう。朝起きて走って、掃除して、買い物して、夜練習して、帰って、洗濯して、飯作って、風呂入って寝る。極端に言えば、それを365日繰り返すのが日常というか。正直、試合が組めない今の状況はきついんです。でも、何かを引っくり返すためにやっているんだから、練習は一日たりとも休めない」。


試合がないから全く無収入で、3度チャンピョンになった時のファイトマネーを切り崩し生活しているという彼だが、過去には数千万単位のCM出演を断ったとの“伝説”もある。「だって僕、タレントじゃなくてボクサーなんで。ボクサーがCMって違うと思うんで。小銭ならいいですよ。でも何千万というお金を稼いではダメだと思った」。 後悔は一切ないと言い切る。


引退を条件にWBC(世界ボクシング評議会)は、彼の殿堂入りを確約し、4つ目のベルトまでくれるという話もあったが、「丁重にお断りしました。だって、ベルトって恵んでもらうもんじゃないでしょう?ボクサーにとってのベルトは、自分で戦って勝って獲るものでしょ?」 いやはや何とも痛快である。


「ですから、私は決勝点がどこかわからないような走り方はしていません。空を打つような拳闘もしてはいません。私は自分のからだを打ちたたいて従わせます。それは、私がほかの人に宣べ
伝えておきながら、自分自身が失格者になるようなことのないためです。」
第一コリント人への手紙9章26-27節、


と聖書に記されている、かつて“やんちゃ”していたがイエスの弟子となり、壮絶な人生を送ったパウロの言葉を思い出す。彼が宣教した約2000年前のローマではグラディエーター(剣闘士)が盛んで、彼は己の信仰の戦いをそれに重ね合わせたのだろう。


キリストを信じて救われた者には、無条件に信仰の戦士のチャンピョンとしての資格が与えられる。いっぽうでそれは、試合に出てベルトを目指し続ける人生でもある。そのために地道に祈り、聖書に親しみ、教会に通い、善に親しむ毎日が続く。金のない時もある。何も起こらず苛立ちがつのる時も。しかし、真の信仰者は、何かをひっくり返すのを信じ、今日もキリストと共に走り続ける。       
2016-4-22

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