もの言う牧師のエッセー 傑作選
第225話「 長距離バス運転手 」
長距離トラック運転手は仮眠を取る時、車内の寝床を使わないという。寝過ごして到着が遅れてしまうおそれがあるからだ。ハンドルの上に両足を乗せ目を閉じる。こうすればやがて体がしびれ、必ず目が覚める。疲労はたまる。
毎日新聞が10年前、格差社会をテーマに連載した記事の一コマだが、記事を読んだ路線バスの運転手から投書が届いた。自分も同じだという。トイレの時間もままならず、もしもに備えて成人用のおむつをつけて運転する。規制緩和による運賃の自由化や営業区域の撤廃が進み、業界の競争が激しくなったことが背景にあり、過重労働が常態化していった。
去る1月に起こった軽井沢スキーツアーバス転落事故は、15人が死亡、さらに生存者全員が負傷し、1985年の犀川スキーバス転落事故以来の過去30年で最悪の事故となってしまった。バス会社の安全軽視の姿勢が批判されているが、果たして原因はそれだけだろうか。
バブル後の20年以上にわたるデフレ経済が続く中、経済再生のかけ声のもと、過度な自由競争に陥り、光が作る影に目を向ける人が少な過ぎる。たった一枚の格安チケットのために働かされる人や、それを買う必要のある人。これでは一億総活躍など空論に等しい。
今から約2800年前に書かれたアモス書には、滅亡前夜のイスラエル王国の悲惨な状況が記されている。
「イスラエルの背きの罪のために、わたしはその刑罰を取り消さない。彼らが金のために正しい者を売り、一足のくつのために貧しい者を売ったからだ。」
アモス書2章6節。
神に選ばれ、祝されたイスラエルは、本来なら貧しい人を助け、弱き人を祝福すべきところを逆に虐げ、神の怒りが爆発し滅亡した。日本人の多くも神を信じない。そして世間はますます世知辛く窮屈になっていく。今はただ、日本の人々が救い主であるキリストを信じ、心の安らぎを得、愛の豊かな社会作りが出来るよう心から祈る。 2016-3-16