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もの言う牧師のエッセー 第131話 再投稿       

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もの言う牧師のエッセー 第131話 再投稿       
「 立派な兵士」  

  去る一月に、元陸軍少尉、小野田寛郎さんが亡くなった時、ニューヨーク・タイムズ紙は、「任務への忠誠心と忍耐力を体現し、戦後の繁栄と物質主義の広がりの中で、多くの日本人が失われたと感じていた誇りを呼び覚ました」と評しているが、まさに至言である。つい先ごろ東京都千代田区で開かれた小野田さんお別れの会にも、若者ら2000人が参列したというから驚く。

フィリピン・ルパング島で30年近く潜伏していた彼は、別に隠れていたわけではなく、逃げていたのでもない、“戦っていた”のである。何と言っても彼は謎の多い陸軍中野学校出身の猛者だ。彼らは極秘裏に組織された諜報部隊で、日本軍一般とは異なり、「生きて虜囚の辱めを受けても」なお生き残り、最後まで敵を撹乱し任務を遂行する。当然 “玉砕” は御法度とされ、現に自害用に母親から手渡された短刀も使うことなく、帰国後に彼女に返却している。したがって同校生徒らにとって“八紘一宇”や“鬼畜米英”などのスローガンは全く無視され、天皇制の是非についてさえ討論されたという。敵の奥深く潜行し、味方さえ欺くために、軍服を着用せず普段から平服に長髪でいることが推奨された。それゆえ、周囲から “非国民” とののしられ、スパイとして教育を受けている以上は親にも理由を明かせず苦労したと言われる。

さらに驚くべきは、生徒の9割以上が一般大学出身者で、東京帝大が最も多く、早稲田、慶応、明大等が続いた。その理由は、職業軍人にありがちな偏った知識を避け、諜報員として幅広く高い学識と冷静な視点が求められ、商社マンなどの民間人を装って活動するためであった。実際、徴兵前に小野田さんは中国勤めの商社マンだった。

そんな聡明な彼だから、日本が復興したことや皇太子の結婚などのニュースは全て知っていた。それどころか入手したラジオで日本の競馬中継を聞きながら仲間と賭けを楽しんでさえいた。野生の牛を捕獲して乾燥肉を作り、ヤシの実を食し、良質の動物性タンパク質とビタミン、ミネラルを効率良く摂取して健康を保ち、投降式の際にはマルコス大統領から「立派な軍人」とまで評された。 聖書には

「キリスト・イエスの立派な兵士として、私と苦しみを共にしてください。
 兵役についていながら、日常生活のことに掛かり合っている者は誰もありません。
 それは徴募した者を喜ばせるためです。」   2テモテへの手紙2章3-4節 

とあるが、見ての通りクリスチャンは “キリストの兵士“ とたとえられている。確かに教会は”駆け込み寺”であり、迷える羊の導き手ではある。が、一たびキリストを心から信じ、彼の聖霊によって強くされた者は、今度は兵士となって、神を愛し人を愛することによってキリストに身を捧げるのである。笑われることもあろう。苦しい時もあろう。しかしやがて到来する「神の国」を信じて耐え忍び、聖書の言葉による豊かな栄養を取り、時には娯楽に講じながら歩むのである。愛する日本と家族たちのために、小野田さんが最後まで敗戦を認めなかったように、クリスチャンもまた、愛する神と人たちのために、負けることなくキリストの立派な兵士として戦い続けるのである。    2014-3-28 

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