もの言う牧師のエッセー 第127話 再投稿
「 カッコいいゴミ屋さん」
私がアメリカで驚いたことの一つにゴミ回収トラックがある。日本のそれに比べ一回り大きい巨大な車体と、車体前方にあるクワガタムシのようなハサミ状の爪を使って、大型の ゴミ容器を運転席後ろの荷台に向かって“巴投げ“したり、車体横にある小さなアームで家庭用のゴミ箱を掴んで回収したり。
カリフォルニア州オーハイ市に住む、5歳の少年ダニエル君はそんなゴミ回収トラックが大好きだ。実は彼は自閉症をわずらっているのだが、トラックが来る日は何時間も前から待ち構え、その到着と共に外へ飛び出し一生懸命にトラックに向かって手を振る。そんな生き生きとしたダニエル君を父親のデビッドさんが目を細めて見つめるなか、母親のロビンさんは日頃の苦労も忘れビデオに収めるという、殆ど家庭の公式行事となっている。
だがその日は少し様子が違った。何と運転手のマニュエルさんがトラックのエンジンを止め、大きな袋を持って外に出て来たかと思うと、ダニエル君に歩み寄り、袋からゴミ回収トラックのおもちゃを取り出しプレゼントしたのだ。しかも見てみると、それは昨年のクリスマスに ダニエル君が両親からプレゼントされたものの、壊してしまったものと同じものだったのだ。大喜びのロビンさんはフェイスブックに投稿、多くの人が感動しニュースでも放映されることとなり、マニュエルさんは本人の知らない間に一躍ヒーローとなった。
「あなたがたの間で偉くなりたい者は、
みなに仕える者になりなさい。」 マルコの福音書10章43節、
というキリストの不思議な言葉は正にこれである。マニュエルさんはただ自分が出来る善意の実行をしただけなのだろう。人を愛し助けることによって誰でもヒーローになれる。この一件で心が癒されたロビンさんは、自閉症児を育てる両親のためのページ「The Gift/贈り物」を併設し、今度は自分が誰かの助けになろうと動き出した。人類の罪のために、身代わりとなって十字架でその身を捧げたキリストを信じ、我らもまた人に与える者となって、ヒーローになろう。
2014-3-11