牧師、バイカー、鮨職人として。。。シェア from LA
第56話 ロン追悼 ⑥「 SDAと海兵隊式葬礼 」
ロンは逝った。さあ葬式だ。「ミッキーさん、お願いね。」 道子さんは軽く頼んで来たが、葬式となると故人に関して色々なことが明らかになるものだ。家族関係や“宗教的“ことなど。葬式の準備と並行して、思わぬ形で私が なぜ臨終の時まで道子さんらに呼ばれなかったか、そのワケが分かった。
ロンの両親はすでに他界しており、彼がこん睡状態に陥ってからは、他州から駆けつけた彼のお姉さんが常に寄り添い一切を仕切っていたという。実はお姉さんは熱心なセブンスデー・アドベンティスト教会(SDA)の信者だった。周知のとおり、異端であるSDAは神であるキリストと大天使ガブリエル等をを同列に置き、イエスを被造物扱いすることなどで知られるが、カルトの特徴の一つである「家族・友人と連絡を取れる権利の侵害」が行使されたためか、道子さんはお姉さんによって私と連絡を取ることを禁じられた。しかし臨終の日、たまたま彼女が席を外したタイミングを見計らい道子さんは必死の思いで私に電話をしたそうな。
異端で厄介なのは「リーダーと信者の信仰や知識が必ずしも一致していない」ことだ。多くの信者は何も知らず言われるままに教会へ通ういっぽう、長老、役員などのリーダーたちは恣意的に信者を支配しコントロールする。したがって お姉さんは明白に後者であることが伺い知れた。こうなれば祈るに限る。私はクリスチャンと呼ばれる人とは一切議論しないと決めている。それは福音の品位とプリンシプルを歪め、サタンを喜ばすだけだからだ。いざとなれば私が退くつもりで全てを神に委ね祈った。すると、ほどなく葬式プログラムの詳細がが公表された。会場は最寄りのSDAの教会堂を使い、葬儀の中でSDAの牧師が英語で15分、私が日本語で15分の説教をすることが決まった。
60人程度のこじんまりとした葬式で、ロンが元海兵隊だったため現役の若い海兵隊員数名が正装で奉仕し、棺は星条旗で包まれ会場は厳粛な空気に包まれた。私と道子さんが通う鮨屋からは日本人を中心とした従業員が15人程度出席し彼らは日本語で私の説教を聞いたのでさながら伝道集会のようだった。最後に生前のロンの写真のスライドが音楽と共に映し出され、海兵隊員らが見事な手さばきで星条旗を三角形に畳んで道子さんに贈呈され締めくくった。終始なごやかに式は進み、結局のところロンのお姉さんからは何も言われなかった。私にとっては全くのアウエーだったが、異端も偽キリスト者もイエスの支配の下では大人しくなる好例だった。
「私たちは彼らに一時も譲歩しませんでした。それは福音の真理があなたがたの間で常に保たれるためです。そして、おもだった者と見られていた人たちからは、――彼らがどれほどの人たちであるにしても、私には問題ではありません。神は人を分け隔てなさいません。――そのおもだった人たちは、私に対して、何もつけ加えることをしませんでした。」
ガラテヤ人への手紙2章5-6節
10-20-2021 つづく。。。