もの言う牧師のエッセー 傑作選
第88話「 失敗の法則 」
愛称「ドリームライナー」。日米を始め、英、伊、仏、カナダ、オーストラリア、中国などから参加企業は実に900社。炭素繊維の多用による軽量化にともなう大幅な低燃費の実現、最大旅客数の増加、飛行速度と航続距離の向上と、まさに鳴り物入りでボーイング787は2011年暮にデビューした。が、この「世界最高技術を結集した」とまで謳われた機の、これまでの迷走ぶりは周知の通りだ。
今年1月にボストン・ローガン空港で起こった駐機中の日本航空008便のバッテリー火災以来、世界各地で燃料漏れ、発煙、ガラスのひび割れなどトラブルが続出。ついにFAA(米連邦航空局)は運行停止を指示。これにより1979年のマクドネル・ダグラスDC10墜落事故以来の、世界中の同型機全てがで運航停止になるという事態となった。しかも良く分からないのは、バッテリーの出火原因も特定出来ぬままFAAはたった3ヵ月後には運行再開を承認。案の定その後もトラブルは続いている。
「ロシアンルーレットで1発⽬が平気だったから次も⼤丈夫というのか?」と86年のスペースシャトル爆発事故調査委員会において、米物理学者R・ファインマン博士は現実より体面を優先するNASA首脳部を批判した。 “ハインリッヒの法則” は、「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する」ことを示し、“マーフィーの法則” も「失敗する方法があれば、誰かはその方法でやる」と人間の不完全さを認める。 だが聖書はもっとストレートで痛烈だ。
「太陽の下に起こる全てのことを悟ることは、人間には出来ない。
人間がどんなに労苦し追求 しても、悟ることは出来ず、
賢者がそれを知ったと言おうとも、彼も悟ってはいない。」
伝道者の書8章17節:共同訳。
今から約3000年前にこの一節を書いた人物は、当時最高レベルの頭脳と科学技術を有したソロモンである。その彼が「出来ない」と言っている。自分がどれだけ優秀でも、創造主なる神の前にひれ伏す。これが信仰である。いっぽうで自分で何でも出来ると思ってる人がいる。これこそがウッカリした無知などではなく、積極的な罪なのだ。そしてこの罪が増幅し無用の失敗を生み出していく。根拠もなく「大丈夫」などと言うのが一番危ない。でも大丈夫。なぜなら大丈夫じゃないないからこそ救い主キリストが来られたのだ。 2013-7-3