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牧師、バイカー、鮨職人として。。。シェア from LA   

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第44話 コロナ、ロックダウン、妻の事故 
⑰「 さらばマスタング 」  

    事故から一夜が明けた。やるべきことが山のようにある中で最初にやったのが大破したマスタングの処置だ。ボヤボヤしてるとジャンクヤード(廃車置き場、或いは一時預かり場所)の使用料が一日200ドル以上もかかりたまったものではない。病院前でラインハート警官(36話参照)から貰ったジャンクヤードの番号にさっそく電話をした。「今すぐ廃車にすれば無料だが、廃車せず家へ持って帰りたければ”持ち出し費用“に約600ドル弱かかる」と言う。訳が分からん。車は自走出来ないので持ち帰るならレッカー代がもう200ドルかかることになる。修理すればさらに車一台分はかかる。そんなカネはない。むしろ廃車費用はタダなので廃車にすることにした。

全身打撲で倒れてしまっている妻を家に残してジャンクヤードのあるLAまで出かけた。24年間連れ添い、32万キロ以上走った93年型フォード・マスタング。ついに別れの時が来たかと万感込み上げてきた。様々な思い出がフラッシュバックしては消えて行く。いわゆる“族車”仕様で若い頃はずいぶん無茶な走り方をした時代もあったが、今回の事故を含めここまで守ってくださった神に感謝しつつ車を走らせた。

ジャンクヤードはCHP(カリフォルニア・ハイウェイパトロール)と提携する厳重な雰囲気で、殺風景な小さなオフィスにお客さん専用の小窓が一つあるだけ。部屋のあちこちに監視カメラがある。CHPの処分を不服とする者が暴れたりすることをへの対策であることが容易に伺い知れた。アメリカでよくいる大柄な太ったオバチャンが出て来て窓越しに一分ほどで手続きが完了した。廃車するのだから当たり前の話だが、実は最後にマスタングを記念撮影をしようと三脚などを持参した。それに車内にはまだ“遺留品”もあるので取りださねばならない。そのことをオバチャンに告げると驚愕すべき言葉が返って来た。

「あなたはこの敷地内に入れない。」「何だって?!」驚く私に彼女は「コロナなので関係者以外は入れません。遺留品はこちらで取り出しますのでそこで待機してください。」思わず頭の中が真っ白になった。折からコロナ危機の最中。アメリカ内外では亡くなった罹患者を家族が葬ることも許されない状況が続出していたが、まさか自分の車がそうなるとは! 結局、敷地を囲むフェンス越しに無愛想なオッサンから遺留品を手渡されただけで終わってしまった。何十年も乗った車というのに何とはかない最後!

「人の子よ。見よ。わたしは一打ちで、
 あなたの愛する者を取り去る。嘆くな。泣くな。涙を流すな。」
             エゼキエル書24章16節

この頃いただいた主の言葉である。罪にまみれるイスラエルへの警告として、預言者エゼキエルの妻を神が殺した時の言葉がこれだ。預言者はいつも苦労する。ここ数年にわたる神からの警告のメッセージ(28話参照) がここに極まった。しかし妻は言った。「神さまは私たちを打たれたけど、マスタングのお陰で私は助かった。マスタングは私の身代わりになったんや。」 その通りだ。私は大事なものを失ったが、最も大事な存在である妻は救われた。マスタングは妻を守り壮絶に散った。神の憐みに感謝し 主を称えつつ2人で前を向いた。      12-3-2020

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