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牧師、バイカー、鮨職人として。。。シェア from LA   

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第36話 コロナ、ロックダウン、妻の事故 ⑨「 ERへ 」  

   我々を乗せた救急車はほどなく病院のER(エマージェンシー・ルーム)付近へ到着した。見るとERというより工場の裏口のような殺風景な所。混雑してるわけではないが、ERの入り口前では先に到着した他の患者がストレッチャーに乗せられたままで待たされている。その周りを救急隊員らが動き回り、入り口ではひっきりなしに病院関係者ら出入りする。そう簡単には中へ入れてもらえないことが想像できた。中へ入れた後も、ERで治療を受けるのに数時間待たされることもアメリカでは珍しくない。

病院は殺気立っていた。救急隊員は皆、目がつり上がり荒々しい。ロックダウンから僅か1カ月、LAでは連日コロナで大勢の人々が命を落とし、病院は崩壊の瀬戸際にあった。そう。ここは“コロナ戦争“の最前線なのだ。固唾を飲んで見ていると、「あなた、もう一度祈って。ここで手を握って。。。」と妻。そうだ。今こそもう一度 祈られねばならない。両手を胸の上で合わせてストレッチャーに横たわる彼女は、どうやら目があまり見えない様子。彼女の手の上に両手をかぶせ声を出して祈った。しばらくして入り口のドアが開き、彼女を乗せたストレッチャーはERの中へと吸い込まれて行った。「意外に早いな」と思いつつ見送る。

「おい、アンタ!」 その時、横で大きな声がした。私に向かって「アンタはここにいてはいけない。もう行け!」と救急隊員の一人がわめいてる。「行けって、どこへ?」と聞き返すと「どこでもだ。そこに道があるだろ!行け!」。頭に来て「何じゃそれ?! 俺は今ここに来たばかりで、妻はERに入ったばかりだ!それに道ってどの道だ?!俺はここに詳しくない!」と返すと「関係ない! 今はコロナなんだ!とにかくあっちへ行け!そこにある道をドンドン歩いて行け!」と彼。ヤレヤレまたコロナだ。何もかもがこのせいだ。

仕方なく前を横切る道の向こう側まで取りあえず歩き歩道に座った。そこへCHP(カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール)の警官がバインダーを持ってやって来た。先ほどフリーウェーの事故現場でいた人だ。小柄だが がっしりした白人中年の彼の名はラインハート。彼の質問に色々と答えた後、「ここにあなたの車を預けています」と 廃車置き場が記されたカードを私に差し出し、丁寧に挨拶をして立ち去った。とっぷりと日が暮れ、ふとER入り口付近を見るといつの間にか誰もいなくなっていた。歩道に座ってるのもシンドイのでもう一度その場所へ戻って置いてある椅子に腰かけた。しばらくボーっとしていたが、突然

「ダビデは彼の神、主によって奮い立った。」   第一サムエル記30章6節

と記された、その日の朝 与えられた聖書の一節を思い出した。ダビデ軍が得るものなく戦場から自分たちのテリトリーに戻ると、何と敵に全てが焼き払われ、妻子を含む全員が連れ去られ、大の男どもが泣き明かした一件である。あまりのショックに部下たちはダビデを殺そうとした。しかし不屈の信仰者ダビデにとって”イモ引く“などあり得ない。かえって神の力で立ち上がるのである。ふと気が付くと、私はすっくと立ちあがっていた。そして見る見る怒りがこみあげて来た。「こらあ!!ワレ誰に向かってケンカ売っとんじゃい!ボケッ!!」とサタンに向かって叫んでいた。この時完全にモードが切り替わった。防戦から攻勢に転じた瞬間だった。万軍の主に在る反撃が始まる。。。 10-5-2020

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